ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
石川啄木
短歌の読みの順序は、以下の順序で進める
0表層読み(①視写 ②音読 ③語句・文法・技法)
1構造よみ(起承転結)
2形象よみ(時・場・人物・事件設定)
3主題よみ・感想
一、表層読み
①
ふるさと→「古里」「故郷」と違う、やさしい、温かい。
②
訛→読み方を問う。字の成り立(言葉が化ける)や、前後(ふるさとの)から推測する。「方言」と違う。「標準からはずれた」という意味がある。出身地の証明。方言がどちらかといえば体系をさすのに対して、訛は響きをさす。方言は標準語に対してそれ以外をさすのに対して、訛は自分の出身地の言葉、ふるさとそのもの。
③
停車場→駅の事だが、駅とどう違う。一般には「ていしゃじょう」と読むがこの場合リズムとして「ていしゃば」の方があうと思う。
④
そを→其・夫『代名詞』他称。相手側の事物・人、または話題の事物を指し示す。格助詞の「の」「が」を伴う例が多い。それ。(国語大辞典)
「それを聴きにいく」
⑤
聴く→耳を傾けて注意して聴きとる。
聞く→耳で聞く。聞こえてくる。
二、構造読み
A案
起 ふるさとの
承 訛なつかし
転 停車場の人ごみの中に
結 そを聴きにゆく
B案
起 ふるさとの訛なつかし
承 停車場の人ごみの中に
転・結そを聴きにゆく
※1行目十字、二行目十字でそろえてあり、三行目が短くなっているところから、形式的には三行目が「転・結」と考えられる。(構造は形式であることを確認)
三、形象読み
「時」
(軽く扱う。啄木という名前がある以上そこから知っていることは読む)
①
啄木→明治時代の人。
②
停車場→昔の言い方。→昔であるが、汽車がある時代。明治か。
「場」
(結局ふるさとにいるのか、都会にいるのかという論争になる)
①
停車場の人ごみ→駅に人ごみができる→都会。
②
人ごみの中にそを聴きにゆく↓
×そを聴きに行くんだから古里の駅にいく。ふるさとにいるのであれば、駅に行く必要がないし、「場」で都会の駅と読んだ。
×汽車に乗ってふるさとの駅へ行く。→行くなら駅でなく家に帰ればいい。
○訛を懐かしんでいるのだから、ふるさとに今すんでない。
○都会の駅のふるさとの人が集まる場所(ホーム)にいく。(上野駅)
「人」(なぜ都会に来ているのか、どういう心情かと読む)
①
訛なつかし→ふるさとを恋しく思っている。ふるさとを出てずいぶんたつ。
②
そを聴きにゆく→だからふるさとにいない。遠く離れている。
◎聴きにゆくくらいならなぜ帰らないのか。
ア遠くはなれているから。
イお金がないから。
ウふるさとに帰ると都合が悪い何かがあるから。
エふるさとは実は心休まる場所ではない。
オ一旗揚げようと考えて出てきているので、それまで帰れない。
「事件設定」
①
都会ではさびしく思っている。訛を使いたい→都会になじんでいないのでは。
②
ふるさとに帰れないなにかをかかえているのでは。
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