2013年7月30日火曜日

「お手紙」 その2

「お手紙」その2(展開部)

 さて、展開部である。
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 かえるくんは、大いそぎで家へ帰りました。えんぴつと紙を見つけました。紙に何か書きました。紙をふうとうに入れました。ふうとうにこう書きました。
「がまがえるくんへ」
 かえるくんは、家からとび出しました。知り合いのかたつむりくんに会いました。
「かたつむりくん。」
かえるくんが言いました。
「おねがいだけど、このお手紙をがまくんの家へもっていって、ゆうびんうけに入れてきてくれないかい。」
「まかせてくれよ。」
かたつむりくんが言いました。
「すぐやるぜ」
それから、かえるくんは、がまくんの家へもどりました。
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★伏線
 この場面では、2つの謎がクライマックス場面への伏線となっていることがわかる。
 1つは、「お手紙」の中身である。
「かえるくんは、おおいそぎで・・・」から「・・・~ました。」「ました。」が続く書かれ方からは、かえるくんが、迷ったり、悩んだり、考えたりせずに、素早く手紙を書いているように感じられる。かえるくんのがまくんに対する思い、人のよさが読み取れる。そして封筒の表に「がまがえるくんへ」と書く。ここは読み手である読者へ、手紙の内容に興味を持たせているところである。

 2つ目の謎は、なぜかたつむりくんだったのか?ということである。謎であるとともに、面白いところでもある。
かえるくんが、こんなにも急いで帰り、あわてて手紙を書いた理由は、一刻も速くがまくんにお手紙を届け、悲しんでいたがまくんに、喜んでもらいたかったからにほかならない。
ところが、かえるくんが手紙を託した相手は、かたつむりくんであった。かたつむりと言えば、その進む速さはゆっくりである。この「ゆっくり」がクライマックスの伏線になってくる。
まず、自分でがまくんに届けるという方法もあったはずである。もちろん、それは、がまくんが言うところの「お手紙」は、単に封筒に入った手紙ということではなく、郵便として、差出人(今回はかえるくん)がいて、配達人(かたつむりくん)が運んで、それを受け取るという(第三者の介入・公的な社会的な制度・大人社会)ことだということをかえるくんも分かっていたからに他ならない。
かたつむりくんに頼んだのは、偶然だったのか、必然だったのか?
もし偶然なら後の展開を考えると、ものすごく幸運だったと言える。もし最初から「かたつむりくん」に頼むことを考えていたとしたら、後の展開はかたつむりくんの意図通りだと言える。「知り合いのかたつむりくんに会いました。」であるから、偶然出会ったとも読めるし、訪ねて会ったとも読める。流れ的には、偶然に出会ったと読める。かえるくんが家を出て最初に出会ったのが、かたつむくんだったいうことだろう。
それにしてもかえるくんは、かたつむりくんが遅いということを考えなかったのだろうか。それは、かたつむりくんがゆっくりだと言うことに、気づかないくらい一生懸命であったのだろうと考えられる。ここから読み取れるかえるくんの人物像は、そそっかしく、あわてものもだと言える。もちろんそれは、がまくんを一刻も速く喜ばせたいということであるから、友達思いであり、優しいということの裏返しでもある。なんとなくほのぼのとした人の良さも感じられる。この人の良さ、そそっかしさが、二人で手紙を待つという、何とも言えない喜びの時間をもたらすことになるのである。
 そして、それを受け取るかたつむりくんのセリフ「すぐやるぜ」も、なんとも間が抜けているというか、面白いセリフである。

かえるくんのそそっかしさは、次の場面でも読み取ることができる。
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 がまくんは、ベッドでお昼ねをしていました。
「がまくん。」
かえるくんが言いました。
「きみ、おきてさ、お手紙が来るのを、もうちょっとまってみたらいいと思うな。」
「いやだよ。」
がまくんが言いました。
「ぼく、もうまっているの、あきあきしたよ。」
 かえるくんは、まどからゆうびんうけを見ました。かたつむりくんは、まだやって来ません。
「がまくん。」
かえるくんが言いました。
「ひょっとして、だれかが、きみにお手紙をくれるかもしれないだろう。」
「そんなこと、あるものかい。」
がまくんが言いました。
「ぼくにお手紙をくれる人なんて、いるとは思えないよ。」
 かえるくんは、まどからのぞきました。
 かたつむりくんは、まだやって来ません。
「でもね、がまくん。」
かえるくんが言いました。
「きょうは、だれかが、きみにお手紙くれるかもしれないよ。」
「ばからしいこと、言うなよ。」
がまくんが言いました。
「今まで、だれも、お手紙くれなかったんだぜ。きょうだって同じだろうよ。」
 かえるくんは、まどからのぞきました。
 かたつむりくんは、まだやって来ません。
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 がまくんをびっくりさせるのであれば、黙っておいて驚かせるのが効果的でありセオリーである。しかし、かえるくんは、だまって待つということができず、がまくんに期待させようとするのである。かえるくんは、がまくんが喜ぶ姿を見たい気持ちを抑えられないのだろう。
ここからは、かえるくんのそそっかしさとともに幼さ、幼さから来るであろう(言い方は悪いが)ある種の愚かさと同時に人の良さも感じられる。

 一方で、がまくんは、ふてくされているままである。いい加減気づいてもよさそうなものである。あるいは、「なんでそんなこと言うの?なんでそう言えるの?」と問いただしてもよさそうである。がまくんの悲しさ、怒りがそれほど大きいとも言える。またここにも幼さが感じられるし、幼さから来る愚かさも感じられる。

 かえるくんは、まどからのぞきました。かたつむりくんは、まだやって来ません。そして二人の3回のやりとりの間に、かえるくんは、3回もまどのそとを見ている。かたつむりくんが来るのを今か今かと待っているかえるくんのはやる気持ちがわかるところである。
他の文末が「ました。」であるのに対して、「まだやって来ません。」となっている。「まだやって来ませんでした。」ではない。ここだけが断定的で言い切りになっているところにも着目したいところである。

 この場面の二人のやりとりは、大変楽しく、おもしろい場面になっている。この場面、読み手によって
「あ~ばれちゃうよ~」「なんでそんなこと言うんだよ~」あるいは「教えてあげればいいのに~」
「なんでがまくんは気づかないんだ~」
「カタツムリ君遅いよ~」「だからカタツムリ君なんかにたのむからだよ~」
「この二人、なんだかおもしろ~い。」
はらはらする子もいれば、笑ってしまう子もいるだろう。中にはイライラする子もいるかもしれない。子どもによって、様々な反応が予想される。
二人のキャラクターと、そのぶつかりそのものが面白いところである。名(迷)コンビと言える。
それと同時に

「がまくん。」(3回目だけ「でもね、がまくん。」)
かえるくんが言いました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」(強い拒否)
がまくんが言いました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(理由というか、、、) 
 かえるくんは、まどからゆうびんうけを見ました。かたつむりくんは、まだやって来ません。

パターンの繰り返しであり、その繰り返しの面白さ(書かれ方・文体)などが面白さの要因となっている。

2013年7月27日土曜日

おおきなかぶ 

「おおきなかぶ」まず教材について

「おおきなかぶ」の教材の変化・成り立ちついては、静岡大学教育学部研究報告『「おおきなかぶ」の日本への紹介と変容-成立』に詳しい。
(以下当ブロブが面白いと思ったところを抜粋。なお、この論文では、ここでは取り上げないが、最初に日本へ紹介された初版訳から紹介されており興味深い論文である)
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前略)ロシアにおける昔話の主人公は圧倒的におじいさんとおばあさんであるらしい。おじいさん(ヂエートカ)、おばさん(バープカ)とならんで、まごむすめ(ヴヌーチカ)となり、子犬(スーチカ)も、語尾に同一の接尾語を持つことから、問題の「かぶ」も、レーパという一般的な名詞ではなく、レープカという語が選ばれるという。しかもこれらはすべて語頭にアクセントがある上に、二音節で表現れる。語りだしの『お爺さんが種をまきました』という文章は、『蕪』と『お爺さん』の語呂合わせによって生まれたのだ。『男は度胸、女は愛嬌のようなものである」(中略)
そして、このお話は一人ずつ登場人物が増えて、同じ行為を繰り返す「累積民話(昔話)」であり、ロシアの民話には多いタイプであるという。そのため、語り口調は、二拍子のアクセントが規則的に並び、強弱の繰り返しというリズムが生まれる。
こうした「累積民話(昔話)」は、鎖状につながったものが切れて、もとの状態に戻る、ことが重要なのだそうである。(後略)
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※「おおきなかぶ」の訳・絵本・教材には様々なものがある。絵本で確認をすること、読み比べてみることも研究する上では大切であると思う。内田莉子訳が有名であるが、教科書版の西郷竹彦訳との違いは様々に研究されてきている。どちらが優れているのかは何とも言えないが、ここでは、あくまでも教科書版(光村)を絵本的に取り上げ考察していくこととする。

★「おおきなかぶ」教材研究

一年生1学期の有名な教材である。
まずは、表層よみから。
学年が下がれば下がるほど表層よみを重視していかなければならない。特に音読は、繰り返しさせたいものである。必要なら劇化もさせる(ここでは、劇化については述べないこととする)。しかし、ここではあくまでも「読み」の領域として教材研究を進めてみたい。

0, 表層

最初は「表層よみ」である。
範読・音読
ここでは、まず範読することで、子どもたちを物語りの世界へ導きたい。そのためにリズムをつけてテンポ良く範読したい。
音読は、一文ずつオウム返しに音読させたり、場面ごとに音読させたり、役割交代しながら読ませたりと、子どもたちが飽きないような工夫も必要。
そして何よりこの作品のよさ、面白さは、リズムである。だとすると、十分に音読をしリズムの面白さを体験させることは重要な学習であると言える。
※音読してみると、以外とリズムがとりにくいように私には感じられる。そこが西郷訳への批判の一つになっている。

言葉の学習
 次に言葉について学習を進める。わからない言葉があれば子どもたち質問させたりする。以下の言葉については、読みを進めるために知っておかなければならない言葉である。これらは、たとえ子どもから出されなくても、教師から取り上げて指導していく。(教師の取り立て指導と呼ぶ)
 まず「かぶ」についてである。教科書に絵があるので、子どもたちから出されないかもしれないが、「かぶ」は、クラスの全部の子どもたちにとっては身近な存在とは言いがたい。そこで、教科書の絵はもとより、写真や実物などを使って教えたい。
 「かぶ」は中央アジア原産、弥生時代から日本にもあったそうである。日本では3~4月まき時。40~60日で収穫できる。しかし、ここで言う「かぶ」は、日本で認識しているそれとは違うようである。サークルの仲間が調べたところによると、ロシアの「かぶ」は本当に甘いそうである(食べてみたいものである)。しかも、ロシアの多くの家庭で食されている「ボルシチ」に欠かせない食材らしい。
そうだとすると、私たちが抱いている感覚と全く違った感覚であろうと思われる。より身近で、より大切な食材なのだろう。このことを子どもたちに分かるように、分かる範囲で教える必要がある。
また、普通の「かぶ」おおきと比較することで、この「おおきなかぶ」が、文字通りそうとうの大きさのかぶ、文字通り「おおきなかぶ」でことがわかる。
 次に結末に出てくる「とうとう」という言葉である。辞書によると「(副)ついに、結局(広辞苑)」だそうである。ここでは、「とうとう」を使って単文作り(発表させればいいと思う)をさせたい。
この他「まご」についても、理解していない子がいる場合は理解させる。また「おじいさん」「おばあさん」については、一般的なイメージ、例えばお年寄り、優しい、、、程度の共通理解をさせたい。

1, 構造よみ

中学年以降であれば、ここで「構造よみ」へと進む。しかし1年生の1学期、最初の物語である。そこで、「構造よみ」へつなげていくためのステップとしてここでは「起こったこと調べ」と「変わったこと調べ」をする。これらは、子どもたちに、「物語(事件)の流れ」や「プロット」を掴むための視点などを育てることが目的である。それらの視点は、後の「構造よみ」につながるものでもある。
また、「登場人物(主人物・副人物)」の確認(一年生ということで、『主人公』という言葉で教えてもいい)なども行う。

どんなことが起こったかな?(起こったこと調べ)
・おじいさんがかぶのたねをまいた
・かぶがおおきくなった
・おじいさんがかぶをひいたけど、ぬけなかった。
・おじいさんは、誰を呼んできたの?  なぜよんだの?(以下同様)
・おじいさんがおばあさんをよんで、かぶをひいたけど、ぬけなかった。
(以下同様)
一問一答形式でいいので、質問しながら流れをつかませる。誰が、誰をよんできたのかをはっきりさたい。

物語の中で変わったことは?(変わったこと調べ)
・一人ずつ増えていく。
・一人→六人
・くる人(動物)がだんだん小さくなる。力が弱くなる。
・だんだん疲れてくる=力が入らなくなる。
・「ぬけません」→「とうとうぬけました。」
・種→おおきなかぶ
・けれども→それでも→やっぱり→まだまだ→なかなか
特に最後の「けれども」→「それでも」→・・・は、行為ではなく表現の変化であるため、子どもたちから出させるのは難しい。そこで「同じ言い方のくりかえし」が続くことを気づかせ、その中で変化している言葉に着目させるなど、工夫が必要だと思われる。またの「面白いところ」を終えてから、「繰り返しの中の変化」に着目させてもいいかもしれない。

出てくる人は、何人?誰?(主人公という言葉の指導)
六人(動物も、人物としてあつかう) おおきなかぶ
主人物は誰であろう。おじいさんか? だとすると副人物は残りの5人ということになる。

この物語の面白いところは?
A繰り返しの面白さ
1「うんとこしょ、どっこいしょ。それでもかぶはぬけません」のセリフの繰り返し
2一人ずつ増えていくが、同じ行為をくり返していくところ
B一人ずつ増えて、同じことをくり返すところ。
 1おじいさん
 2おじいさん、おばあさん
 3おじいさん、おばあさん、まご
 4おじいさん、おばあさん、まご、いぬ
 5おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ
 6おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみ
C引く人がだんだん小さくなるところ。
D最後に一番小さなねずみがひいたらぬけたところ。(おち)
以上のようなことが考えられる。自由に発表させたい。この他が出されても、共感的・肯定的に取り上げていく。

2, 形象よみ

★導入部と終結部を中心に読み進める。その際、文章だけでなく、絵を手がかりとして読んでいく。一年生ということもあり、助言を多用しながら進めていく。(よってここでは、助言のヒントとなるような指導言を入れながら進める。)
光村図書教科書よりお借りしました

① 時(絵から季節を読む)
季節はいつかな? 絵の何を見たらわかると思しますか?=おじいさんの服装=長袖、生地も厚そう。
→だから、夏は半袖だから、夏じゃないよ。冬だよ。
→長袖を着るのは冬だけかな?
かぶの種をまく時期はいつ頃か知ってる?=春(日本では3~4月)  40日~60日で収穫

② 場
ここはどんな場所かな?絵をみて考えて?
家の様子→山小屋みたいな家。日本の家とはちがう。=外国
回りに他の家がない=いなか
広い畑がある
 木は見えないから森ではない。高原?
中心に読み取らせたいのは、人物である。時・場は、確定する要素はない。そこで時・場については軽く扱うか、時には省略してもいいと思う。

③ 人物
★おじいさん・・・男、年寄り
◎絵からわかること
白いひげが長い=お年寄り
手を見てごらん。手や指からわかることは?=手のしわ、指の関節が太い→働き者。力が強そう。お年寄り
顔の色が赤い=日に焼けているのかな→働き者。農夫。白人(日本人ではない)
種のまき方=腰をまげている→粒一粒丁寧に種をまいている。
おじいさんの服からわかることはない?
=ながい上着。服が汚れている。破れている。布施。帽子(ハット)。日本の服とちがう。作業するための服。
=ふせをして使っている→貧しそう。物を大事にしている。
=作業をするための服→きっとおばあさんがしてくれたんだよ→優しいおばあさんじゃないかな
Aおいいさんの気持ちは?一生懸命。大事に育てよう。
Bおじいさんはどんな人?働き者
        
◎セリフからわかること
・「あまいあまいかぶになれ」「あまいかぶになれ」とどうちがう?
おじいさんのあまいかぶになって欲しいという気持ちが強いのがよくわかる。
・「おおきなおおきなかぶになれ」「おおきなかぶになれ」とどうちがう?
・おじいさんは、なぜかぶの種をまいたのだろう?
※以下同様に絵を中心に人物形象を読み取る(おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみ)
光村図書よりお借りしました
★まご・・・教科書の絵では、まごは笑顔であり、あきらかに面白がっている。楽しんでいると言ってもいい。
→まごは、おじいさんやおばあさんと一緒にかぶをぬくのが楽しい。
いかにも子どもらしい反応だと言える。
→まごは、おじいさんやおばあさんが大好き。
★出てこない人物・・・まごの両親。

④ 事件設定 
・おじいさんは何をしましたか?わかる文に線を引きましょう
おじいさんが、かぶのたねをまきました。
・その種はどうなるのですか?
あまいあまい、おおきなおおきなかぶになりました。
・どのくらい「おおきなかぶ」になりましたか?
おじいさん一人では、ぬけないくらい。だから、おばあさんたちをよぶのですね。
※「事件設定」という言葉を教える必要はない。人物の読みの流れで、読んでいく。

⑤ 話者
(外の目)省略してよい。

⑥ 最後の一文
A「とうとう かぶは ぬけました。」
(ついに かぶは ぬけました。)→話者がぬく側に寄り添っている。「やっとぬけた」
(けっきょく かぶは ぬけました。)→抜けたことに対して、否定的な感じがしないか?
「とうとう」に違和感はないか?
B「とうとう かぶ ぬけました。」「とうとう かぶ ぬけました。」の違いは?
なぜ「は」なのか?「が」とどう違うのか?
「ぬけてしまった」的な感じがどうしてもするのですが、、、、深読みしすぎか、、、。
※ここも流れの中で、、、、。

3, 主題へのアプローチ

① 一文で書いてみよう(~が・・・によって〇〇した話)
おじいさんが、おばあさんやまごやいぬやねこやねずみと一緒におおきなかぶをぬく話。
おじいさんが、おばあさんやまごやいぬやねこやねずみに助けられて(ちからをかりて)おおきなかぶをぬく話。

② 題名よみ
・「おおきなかぶ」意外に考えられる題は「おじいさんと仲間たち」どうちがうのか?
題名からわかることは、物語の中心は「おおきなかぶ」だということ。登場人物に名前がない、個性が特にないことからもそう考えられる。だとすると最後の一文は、「ぬけてしまった」的な意味がないこともないのかなと、、、。はやり深読み過ぎか、、、、。

③ 物語に関わる疑問?
・この後かぶをどうしたのか?
・かぶが象徴するものは?(これは一年生には無理か?)
・なぜかぶは一つか?他のかぶは?だから貴重なのか。考えすぎか。
・いぬやねこやねずみはなぜ手伝ったのか?「面白そうだから」と読むべきか?
・なぜ名前がないのか?
・お父さん、お母さんはどうしたのか?
※読む際に、なにより大切にしたいことは、子どもたちが「?」を浮かべることができるようにしていくことだと思う。それが物語の面白さに繋がるし、読み深めるヒントになるからである。子どもたちの「?」には、答えが出ないものもあると思う。それはそれとしてオープンエンドの話し合いでよい。

④ 好きなことろは(いいな、気に入った)、どこですか?理由も言いましょう。

⑤ いやだなと思うところはどこですか?理由も言いましょう。
※⑤は批評へのアプローチのつもりだが、④まででいいのかもしれない、、、。

2013年7月26日金曜日

「お手紙」その1

「お手紙」その1 謎を追究する面白さを

「お手紙」は謎の多い物語である。この物語はちょっと変わった始まり方をしている。
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がまくんは、げんかんの前に、すわっていました。
かえるくんがやって来て、言いました。
「どうしたんだい、がまがえるくん。きみ、かなしそうだね。」
「うん、そうなんだ。」
がまくんが言いました。
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★これは、「お手紙」の冒頭部分の一節である。
 まず「がまくんは、げんかんの前に、すわっていました。」からして謎である。玄関の前に座るということは、あまり見かけない行為である。なぜわざわざ玄関の前に、座っていたのか?
しかも、「悲しそうな顔」をしているのである。やってきたかえるくんはあきらかに知り合い、いや友達。普通なら、「おはよう・こんにちは」とか「やあ」とかお互い挨拶をかけ合いそうなものである。しかし、やってきたかえるくんはいきなり「どうしたんだい」と問いかけている。それほど悲しそうな顔=雰囲気を、がまくんは醸し出していたと考えられる。言いかえると、がま君は、誰にでもわかりやすく、もっと言うと「これみよがし」に自分の悲しさを訴えていたのである。
「うん、そうなんだ。」かえるくんの問いかけにがまくんは答える。やはり誰かに聞いて欲しかったのであろう、即答しているようにみえる。普通なら無言の場面である。このやりとりから読めるがまくんの人物像は以下のようなものであろう。

幼い。(がまくんの見え見えの雰囲気は、いかにも幼い子どもがとりそうな行為である。)
それは「甘えん坊」だとも言える。
あるいは、わがまま。(これは、年齢的なものなのか、性格的なものなのかは判別できない)
そうとう深刻な出来事ががまくんの身にふりかかった。(謎。読者を引き込むしかけになっている)

この他、いくつかの疑問や謎もある。
果たしてがまくんは、かえるくんが視界に入る前から悲しそうな顔をしていたのか?
もしそうだったとしたら、他の人はがまくんに声をかけたりしなかったのか?それはなぜか?
かえるくんが視界に入ったので、悲しそうな顔をしたとすると、それはなぜか?

もし③であるとすると、そこからがまくんの人物像や二人の関係が読めてくることになる。
また、これは絵本でる。絵から読めるがまくんの人物像もある。また「がまがえる」であるから、あまり動かない、動きが遅いところから、のっそりした感じ、ぼーっとした感じなどがわかる。(くわしくは省略)

★さて冒頭部分をさらに読み進めてみよう
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「今、一日のうちのかなしい時なんだ。つまり、お手紙をまつ時間なんだ。そうなると、いつもぼく、とてもふしあわせな気もちになるんだよ。」
「そりゃ、どういうわけ。」
かえるくんがたずねました。
「だって、ぼく、お手紙、もらったことないんだもの。」
がまくんが言いました。
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 なんとも理屈っぽい言い回しである。また「かなしい時なんだ。」「つまり」「時間なんだ。」「そうなると」などという言い方を、話し方を、がま君は普段からしているのだろうか?
このセリフから、がまくんは、理屈っぽく、少し変わった子(子だとして)だと言えそうである。また、「ふしあわせな気もち」からは、そういう言葉を使うことへのあこがれというか、ちょっと背伸びした感じも受ける。普通は、友達との会話では使わない言葉であることは間違いない。それは「もらったことないんだもの。」という言い方の幼さかと合わせて考えるといっそう浮き立ってくるように思う。また、この言い方からは、少しひがみっぽい感じがする。

さて、続きを進めよう。
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「いちどもかい。」
かえるくんがたずねました。
「ああ。いちども。」
がまくんが言いました。
だれも、ぼくにお手紙なんかくれたことがないんだ。毎日、ぼくのゆうびんうけは、空っぽさ。お手紙をまっているときがかなしいのは、そのためなのさ。
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 なんと、「だれも、ぼくにお手紙なんかくれたことがないん」ことが悲しさの原因だということである。読み手からすると、少しばかり大げさすぎやしないかという感じもする。スネている感じである。手紙をもらったことがないというだけで、そんなに不幸せな気持ちになるのは、少し大げさではないかという違和感である。
ここも謎だらけである。
なぜ手紙がこないことがそんなに悲しいのか?(なぜそんなにお手紙が欲しいのか?)
なぜ自分から出そうとは思わなかったのか?出さなかったのか?あるいは出したけど返事がなかったのか?
そもそも、誰から、どんな手紙がくると思っているのか?きて欲しいのか?
この読み手に湧く「違和感」「謎」は、この物語ではとても重要な読みへとつながるのではないかと感じる。
これらはどう考えればいいのか?そして、そこから読める人物像は、、、、。

 それにしても、がま君にとっては、この悲しさは、がまくんにとってそうとうな悲しさのようでる。それは「ああ、いちども。」「お手紙なんか」「空っぽさ」などの拗ねたような言い方から容易に想像できる。
また、がま君は、そうとう甘えん坊でさみしがりやなんだろうと感じる。しかし、どこか憎めない感じ、助けてあげたくなる感じも私には感じられる。

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 ふたりとも、かなしい気分で、げんかんの前にこしを下ろしていました。
すると、かえるくんが言いました。
「ぼく、もう家へ帰らなくっちゃ、がまくん。しなくちゃいけないことが、あるんだ。」
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そんながまくんに、かえるくんは同情している。かえるくんは、いいやつなのだろう。
「いちどもかい」と
かえるくんが悲しい気分になったのは
がまくんにお手紙がこないことなのか?
お手紙がこなくて悲しんでいるがまくんのことを思ってなのか?
そんながま君の気持ちを知らなかったこと、気づいてやれなかったことなのか?
自分が、がま君に一度も手紙を出さなかった出したことがなかったことへの後悔からなのか?
の、どれなのだろうか?いくつかの思いが重なっているのだろう。
かえるくんは、玄関に座っている悲しそうな顔のがまくんを見てすぐに「どうしたんだい。」と心配している。そして、その理由を聞きながら、かえるくんもまた「かなしい気分」になっていく。そんな友達思いのかえるくんであるが、この場面では、けっして励まそうとはしていない。なぜなのだろうか?「いちどもかい。」と尋ねているところから、かえるくんはお手紙をもらったことがあったのであろう。だからなのかもしれない。あるいはもらったとこがなかったとして、自分はそれを考えたことも悲しんだこともなかったのであろう。
そう考えると上記した③④の思いがあったことは確実だと言えそうである。あるいは、「いちどもかい」というかえるくんの何気ない言葉が、さらにがま君を傷つけたことも気づいていたのかもしれない、、、。

そのかえるくんは、この場面での最後のセリフ
「ぼく、もう家へ帰らなくっちゃ、がまくん。しなくちゃいけないことが、あるんだ。」
と言う。まず前半を普通の言い方に直すと「がまくん、ぼく、もう家へ帰らなくっちゃ。」である。比較すると、急に思いついたような感じである。そして、「どうしても帰りたい、帰らなければならない」ことを思いだしたという感じがする。それは「しなくちゃならないこと」があるからとなる。「することがある」あるいは「したいことがある」と比較すると、「どうしても、なにがなんでも」といった思いが込められている。後で出てくるのだが、かえるくんは、家へ帰ってがまくんにお手紙を書こうと思いついたのである。だから「どうしても」であり「なにがなんでも」なのだろう。ここから物語は、結末へ向けて展開していくことになる。
★ここからわかるかえるくんの人物像は、
人がいい。優しい。
思いついたらじっとしていられない性格。
がまくんのことが大好き。友達おもい。
といった感じであろう。


※1学期にサークルで提案したものを元に、みんなで検討したこと、そして跡上先生のアドバイスを受け、もう一度「お手紙」について考えみたいと思いました。そこで、これまでとは書き方を変えて、少しずつブログにアップしていきたいと思います。

2013年7月24日水曜日

「生き物はつながりの中で」 再考

前回「生き物は・・・」についてアップしたところ、うれしいことに反論のコメントがありました。以下
★投稿されたコメント
この説明文の、文章構成図は
    ①
    |
    ②

   ③④⑤

    ⑥
    |
    ⑦ だと思います。①は話題提示と呼びかけ
             ②が問い  ③④⑤が説明
             ⑥が答え
             ⑦が筆者の主張だと思います。
いかがですか?

前文が私の提案では1段落だけなのに対して、1・2段落ではないかという反論です。以下、再考したものを載せてみます。ここでも私は1段落だけを前文としています。1学期に実践したのですが、子どもたちも1段落だけだと言いましたが、、、、。ぜひ検討してみてください。そしてより正確な教材研究にしていきましょう。
なお、今回は吟味よみまで入れています。


★構造よみ
前文1  本文2~5  後文6 7
◎2段落は前文か本文かという観点。
・前文には問題提示=全体にかかわる問題 がある。1段落に問題らしき文が2つ(➃文・⑤文)ある。よって1段落は前文。
・ところが2段落にも問題らしき文(⑩文「しかし、本物のイヌとロボットのイヌは本当に同じでしょうか。」)がある。これは1段落➃文「ロボットのイヌは本物のイヌとはちがいます。」という結論=前提と矛盾するため、これは論を進めるための「なげかけ・よびかけ」と考えられる。
・そもそも2段落は、説明がはじまっている。よって2段落は本文となる。
◎6段落は、本文か後文かという観点。
・6段落はまとめであり、後文。7段落は筆者の考え主張が書かれており後文となる。
◎本文をいくつに分けるか  本文Ⅰ(2段落3段落)    本文Ⅱ(4段落)     本文Ⅲ(5段落)
・3段落の最後から2文目が、「・・・生き物の特徴です。」と一つの結論を述べているので、3段落で切れ4段落から別の説明がはじまることがわかる。
・4段落の最後は「・・・生き物らしいところであり、ロボットとのちがいです。」とここも一つの結論を述べているので、4段落で切れ5段落から別の説明がはじまることがわかる。
・5段落「次に」ではじまる。よって違う観点での説明であることがわかる。

★要約読み
前文
1段落の要約
説①イヌ型ロボットを知っていますか。
説②
説③でも、ロボットのイヌは本物のイヌとはちがいます。
柱⑤どこがちがうのでしょう。(柱的ではあるが、⑥でまとめられているとも言え、説明だとも考えられる。
 +・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
柱⑥そのちがいを考えながら、生き物の特徴をさぐってみましょう。
◎前文の要約
ロボットと本物のイヌのちがいを考え(ながら)、生き物の特徴をさぐる(ろう)。32文字

本文(本文Ⅰ 本文Ⅱ 本文Ⅲ)
2段落=説明 本物のイヌの説明
 ↓   ①書き出し
②~➃本物のイヌの説明
⑤生き物の説明 このように、生き物は、体外から必要なものを取り入れ、体内から不要なものを出して、内と外とで物質のやり取りをしています。
⑥~⑨ロボットのイヌの説明
  1. 次への問い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3段落=柱
①~⑤本物のイヌの例
    ⑥⑦人間の例
    ⑧⑨ロボットの例
柱⑩外から取り入れたものが自分(身体)の一部になる(り)、(そのようなつながり方で)外とつながっているのが、生き物の特徴です。
◎本文Ⅰの要約
外とつながっているのが、生き物の特徴だ。(20字)
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4段落=柱
①~⑥本物のこと
柱⑦変化・成長しながら、一つの個体として時間をこえてつながっている、これも生き物の特徴です。
 ⑧説明
◎吟味
主語(本物のイヌは)  述語(つながっている)  
何と?「個体として」体の細胞が昨日から今日、明日へとつながっていることを個体として個体としてつながているという言い方でいいのか?
「つながる」という言葉は「何かと」「何か」が「つながる」というふうに2つ以上の者をつなげる時に使うのだが、、、。昨日のチロと今日のちろはつながっているというふうな言い方か、ちろ自身の体が一生を通じて変化しているけれどつながっているか、、、、。本来「生き物の特徴」から言うと、「変化・成長」することでいいのではないか?それを「つながっている」とするのは無理がある。
◎本文Ⅱの要約
一つの個体としてつながっているのも(が)、生き物の特徴だ。(26字)
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5段落=柱 ①~⑥生まれ方の例(見てみましょう→例)
柱⑦このように、過去や未来の生き物たちとつながっていることも生き物の特徴です。
⑧説明
本文Ⅲの要約
過去や未来の生き物たちとつながっているの(こと)も、生き物の特徴だ。30

◎本文の要約
本文Ⅰ要約「外とつながっているのが、生き物の特徴だ。」(20字)
本文Ⅱ要約「一つの個体としてつながっているのが、生き物の特徴だ。」(26字)
本文Ⅲ要約「過去や未来の生き物たちとつながっていることも、生き物の特徴だ。」(31字)

後文
6段落
説 ①本物のイヌとイヌ型ロボットを比べながら、生き物の特徴を見てきました。
説 ②生き物は、外の世界とのつながり、一つの個体としてのつながり、長い時間の中で過去の生き物たちとのつながるというように、さまざまなつながりの中で生きていることがわかりました。
柱 ③このつながりこそが、生き物の生き物らしいところで有、ロボットとのちがいです。

柱文だけの要約 (この)つながり(こそ)が、生き物とロボットのちがいだ。20
  ↓(指示語)
この=外の世界とのつながりや、一つの個体としてのつながりや、過去の生き物たちとのつながりというような、さまざまな
    ↓(挿入)
外の世界とのつながりや、一つの個体としてのつながりや、過去の生き物たちとのつながりというような、さまざまなつながりこそが、生き物とロボットのちがいだ。
  ↓前文の2つの問題提示にあった答えにすると
  ◎6段落の要約
外の世界とのつながりや、一つの個体としてのつながりや、過去の生き物たちとのつながりというような、さまざまなつながりこそが、生き物の特徴で、生き物とロボットのちがいである。

7段落 
理由①あなたは、今日もあなたであり、明日もあなたであり続ける、たった一つのかけがえのない存在です
  理由②と同時に、あなたは過去のすべてとつながり、未来へもつながっていく存在なのです。
  理由③また、地球上の他の生き物ともつながっています
   ↓    (①+②+③)→(➃+⑤)
          (理由) → よびかけ(筆者の主張)
  柱 ➃そう考えると、今、あなたが生き物として生きていることが、とてもすてきに思えてきませんか。
   +   ➃要約「あなたが生き物として生きていることが、すてきに思える。」
  柱 ⑤そして、自分自身のことが大切であるように、他も大切であるという気持ちになりませんか。
    ⑤要約「自分自身と同様、他も大切であるという気持ちになる。」
7段落の要約➃+⑤
「あなたが生き物として生きていることが、すてきに思え、自分自身と同様、他も大切であるという気持ちになる。


★吟味よみ(観点①本分と理由の整合性  観点②理由と主張の整合性、納得感)
吟味観点①(①②③の下線部分が本文からのつけくわえ、おきかえになっている。ずれを確認して、吟味する。)
①は本文のどこのことなのか?なぜ自分であり続けることがかけがえのないことなのか?納得できるか?
②は「存在」の意味を理解できるかどうか。存在とはなにか?なぜわざわざ存在と言っているのか?
③は、本文のなんとの置き換えか?「外の世界とつながり」のおきかえ。これがわかるかどうか?
吟味観点②
「あなたが生き物として生きていること」=「つながっている」「かけがえがない」ということであろうと読める。「かけがえのない」=4段落「自分自身とのつながり」でる。このために無理筋で入れたとも思える。
ここを「つながり」を使って述べればよかったのではないか。
総評

基本的に「つながり」にまとめようとした点に若干無理が生じたのではないか。4段落「一つは自分自身の中でのつながり。」が無理筋か。そのために7段落で順序を入れ替えてあるのかもしれない。

※なお、前回の教材研究は何年も前のもので、教科書の教材自体が手直しされているようです。それもあり今回再び再考してみました。