2013年8月2日金曜日

「お手紙」 その4

「お手紙」 その4(終結部)

★終結部
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 四日たって、かたつむりくんが、がまくんの家につきました。
そして、かえるくんからのお手紙を、がまくんにわたしました。
お手紙をもらって、がまくんは、とてもよろこびました。
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「四日」も二人は手紙を待っていたのである。その間、今か今かと毎日玄関に二人して座り、楽しい気分で過ごしていたのだろう。逆に言うと「四日」もそういう気分を味わうことができたのである。その原因は「かたつむりくん」である。少し慌て者のかえるくんが、あわてて何気に頼んだのが「かたつむりくん」だったおかげである。

★この「待つ」に関わって、跡上先生は次のように述べている。
同じ「まつ」でも、導入部の「まつ」と終結部の「まつ」では意味が違う。

 がまくんは自分にお手紙が来ることを期待し、毎日それを待っている。しかしながら、お手紙は来「ない」のだ。「ない」お手紙は、がまくんにとっては「ない」どころが、「ない」ことでもってますます大きな意味をもつようになる。
(「ないことにまつわるふしあわせとしあわせ」跡上史郎)

☆上記の跡上先生の文章を受ける形で書くと
がまくんは自分にお手紙が来るこを期待し、毎日(四日間)待っている。そしてお手紙は確実に来るのだ。それどころか、素晴らしい内容で「ある」ことを知っているのだ。お手紙は、がまくんにとっては「ある」どころが、確実に手紙が「ある」こと(存在していること)、そして内容も自分にとって意味が「ある」ことでもってますます「まつ」ことが喜びの意味をもつようになる。(重藤)
と言ったことになるだろうか、、、、。

 蛇足だが、かたつむりくんは四日もたってついたときに二人へ何といったのだろうか?それを想像せずにはいられない。
私には、きっとかたつむりくんは、
「どうだい、はやかったろ」
程度のことを言って、二人を笑わせたように感じるのである(かたつむりくんはもちろん大まじめ)。
そして二人は
「いや~おそかったね~。おかげで四日も楽しめたよ。」
みたいな事を言いそうな雰囲気を持った物語に感じるのだ。

「お手紙をもらって、がまくんは、とてもよろこびました。」
かえるくんからの話で、すでに「しあわせな気持ち」になっていたがまくんだったが、実際に手紙をもらって「とてもよろこびました。」もちろん、それを見ていたかえるくんも喜んだことは想像に難くない。
こうしてハッピーエンドになり、幸せな気持ちのまま、二人は再び冬眠に入るのであろう。
これがこの『ふたりはともだち』のエピローグになっている。

★『お手紙』の季節は?

『ふたりはともだち』の
1『はるがきた』は、文字通り春のエピソードである。
2『おはなし』は、夏のエピソード。
3『なくしたボタン』は、「大きなくさはら」「せのたかいくさのあいだを」「すずめ」「あらいぐま」などの表現から夏。
4『すいえい』は夏。
という組み立てになっている。
そして最後の『お手紙』は、文からは直接は季節がわからない。がまくんが物思いにふける点からは「物思いの秋」を連想はさせる。絵を他のエピソードと見比べてみると、花や草の背丈が低いように感じられる。秋と言いたいところだが確証はない。しかしこの本の組み立ての流れからは(冬眠の目覚めから、冬眠の前までの話)、秋だと想像はできる。


★終わりに
 これまで4回に渡って、この「お手紙」を長々と書いてきた。
今回は、書きながら、書いた分をその都度このブログにアップするという方法をとった。そのために、誤字脱字はもとより(誤字脱字等は気づいた時点で修正しているが、、、)、肝心の「読み」においても、少しねじれが生じている部分があるかもしれない。また、書きたりなかった部分もある。
それは、このような聞き方(分析風とでも言うのか?)が初めてだったこともある。
 なにより、書き始めた時に見ていた景色と、最後に見えた景色が少しだけ違う景色のように感じている。そのことについては、いつもの様に「叩き台として」という言い訳を付け加えておきたい。

2013年8月1日木曜日

「お手紙」その3

「お手紙」その3(山場の部)

★ここまでをまとめてみると
 がまくんは、玄関に座って自分から手紙を出してみるなどはせずひたすら待つだけで、しかも手紙がこないことにただ悲しみあげく怒っている。甘えん坊で、幼い人物像が読み取れる。しかも、よくよく考えると毎朝手紙を待つ時間を決めているというのは、そうとう変わり者だと言えそうである。どちらかと言えば偏屈な感じもある。
一方のかえるくんは、そんな悲しそうながまくんをほっとけない、優しいとともに少しお節介で、そそっかしい感じがする人物像である。そして、二人とも幼く、少し愚かさもある。

さて、いよいよ山場の部である。
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「かえるくん、どうして、きみ、ずっとまどの外を見ているの。」
がまくんがたずねました。
「だって、今、ぼく、お手紙をまっているんだもの。」
かえるくんが言いました。
「でも、来やしないよ。」
がまくんが言いました。
「きっと来るよ。」
かえるくんが言いました。
「だって、ぼくが、きみにお手紙を出したんだもの。」
「きみが。」
がまくんが言いました。
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★謎 なぜかえるくんはお手紙を書いたことを話してしまったのか?
 さすがのがまくんも、かえるくんが何度も窓の外を見ていることに気づいてしまう。それどころかかえるくんは、「だって、ぼくが、きみにお手紙を出したんだもの。」とあっさりと自分が手紙を出したことをばらしてしまう。いかにもそそっかしいかえるくんらしい行動とも言える。幼さだとも言える。

しかし、ただそそっかしい、幼いということとは少し違うような感じもする。どちらかと言えば、教えたくてしかたない。出し惜しみしながら、焦らしている、そしてそれを楽しんでいるようにも読めるからである。それは、この場面の前、展開部の二人のやりとりから続いているようにも思える。「お手紙をまっているんだもの。」「お手紙を出したんだもの。」という言い方からも、しかたなく言っているようでもなく、思わず漏らしたようでもない。どちらかと言えばそれでを楽しんでいるように感じられる。ひょっとすると、話したくてしかたないのかもしれないと思える。黙っていることを我慢できないように感じられるのである。

 もちろん、がまくんには、自分が手紙を出したことを黙っていて、よりサプライズ的にする方が、よりがまくんを喜ばせることができる。しかし、はやくがまくんにそのことを、自分が手紙を出したことを言いたくてしかたない。
これは、前者の方が、より優しいとか、思いやりがあると言いたくなりそうだが、しかし、そうではないのだろう。先にかえるくんの人物像を「お節介」と書いた。「お節介」と「親切」(この場合「思いやり」と言い換えてもいいが)は、やはり紙一重なのだ。それは、ある絶対的な基準があるわけではなく、「する側」と「される側」の微妙な関係の中でどちらにもなり得るものなのだと言える。二人の関係性の中に基準(?)があるのだと言える。もちろん二人のキャラクターにも関係していることは言うもでもない。そしてなにより、その「お節介」がもたらした結果、それをされた側の気持ちが決定することなのだと言える。
だとすると、この後の二人の気持ち、とりわけがまくんの気持ちが快なのか不快なのかを考えると、かえるくんの行為は、決してお節介ではなかったと言えそうである。前の場面から続き結末まで続く二人のやりとり、そこからは、二人の関係性、名(迷)コンビぶりをこそ読みとるべきことだと言える。それがこの物語のテーマの一つだと言えそうである。(「お節介」=「悪」だと言っているわけではない。)

 さてこの場面、お手紙を待っていたのはがまくんである。しかし、この場面でお手紙を待っているのはかえるくんになっている。そこもまた、この物語の面白さである。

続きをみてみよう。
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「お手紙に、なんて書いたの。」
 かえるくんが言いました。
「ぼくは、こう書いたんだ。ぼくは、きみがぼくの親友であることを、うれしく思っています。きみの親友、かえる。」
「ああ。」
がまくんが言いました。
「とてもいいお手紙だ。」
それから、ふたりは、げんかんに出て、お手紙の来るのをまっていました。
 ふたりとも、とてもしあわせな気もちで、そこにすわっていました。
長いことまっていました。
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 いよいよクライマックス場面である。ここでは、手紙を出したことだけでなく、その文面まで教えてしまっている。それはなぜか?これも、先に述べたとことと同じなのだろう。

★親友の謎を考える(「親友」という言葉に込められたかえるくんの思い)
★手紙の内容(文面)を考えてみる。
「ぼくは、きみがぼくの親友であることを、うれしく思っています。きみの親友、かえる。」
これが文面である。
この手紙は、何を言いたいのか?
「親友」だと言うことを伝えたいわけではない。「うれしく」思っていることであろう。(序列的に)
それは、「ぼくは、君の親友です。」とどう違うかを読み比べてみることではっきりする。がまくんのことではなく、かえるくんは自分自身のことを、自分自身の思いを言いたいのである。
「だれもぼくにおてがみなんかくれたことがないんだ。」(冒頭場面)、「ぼくにてがみをくれる人なんているとはおもえないよ。」(これは手紙を書いた後のセリフであるが、友達であるかえるくんは理解していた。)の答えとして「君には、ぼくがいるじゃないか」だから元気出せ、ではなく、「ぼくには、きみがいるんだ」それが「うれしい」ありがとうと言っているのである。がまくんがいてくれてうれしい。がまくんがぼくの親友でよかった。と言ったことだろう。かえるくんの優しさが感じられる文面になっている。
 かえるくんは、がまくんのこと(思い)を本当によく理解していることを読み取ることができる。だから、がまくんは「ああ」と感嘆の声を思わずあげたと言える。だから、「とてもいいてがみだ。」と素直な気持ち(感想)を言えたのだろう。

★二人の関係について
 二人の関係は、どちらかというと、ドジで変わり者のがまくんを親切にお世話するかえるくん、といった構図である。その関係の中で、がまくんは多少劣等感を持っている(それがスネた言動になっている)と思われる。それが、冒頭のがまくんの行動(玄関前にわかりやすい表情で座っている。かえるくんがなだめても、ふてくされたような返事をくり返す)に表れている。
しかし、先の文面からするとかえるくんにとってがまくんは、けっしてお世話してあげる人ではなく、なくてはならない唯一無二の存在だということがわかる。それが「親友」という少し改まった言葉だと言える。 これは、かえるくんの本音なのだろうか?という疑問がわいてくる。
「かえるくんは、おおいそぎでいえへかえりました。えんぴつとかみをみつけました。かみになにかかきました。かみをふうとうにいれました。」からは、熟考した様子は見受けられない。思ったことを、言い換えると常々思っていたことを書いたようにみえる。

★『ふたりはともだち』から
 実はこの「お手紙」という物語は、『ふたりはともだち』をいう本の5つのエピソードの最後に納められているエピソードである。(私の手元にあるのは「文化出版局 ミセスこどもの本」 アーノルド・ロベール作 三木 卓訳『ふたりはともだち』 発行所学校法人 文化学園 文化出版局)
 1つ目のエピソード『はるがきた』では、4月になっても冬眠から起きないがまくんに春のすばらしさを伝える(二人で感じて喜ぶ)ために、がまくんをなんとか起こそうとする話。
 続く2つ目のエピソード『おはなし』は、体調を崩したかえるくんが、がまくんに何かお話をして欲しいと頼む。そこでがまくんは、あれこれとお話を考えるのだがどうにも思い浮かばず、最後は壁に頭をガンガン打ち付けてまで考えるだが、結局思いつかない。それどころか、頭を強く打ったためにがまくんが体調不良になってしまう。そこでこんどはかえるくんが、がまくんにお話をしてあげると申し出、今自分のために悪戦苦闘するがまくんの姿を話す。しかし、がまくんは途中で眠ってしまうのである、、、。
 3つ目『なくしたボタン』、4つ目『すいえい』の内容は省略するが、どれもちょっと間抜けでドジながまくんと、そんながまくんを優しく機転が利くかえるくんがお世話するという、なんともほのぼのとしたお話が続くのである。
 しかし、決してかえるくんはがまくんに対してお世話している風ではない(私ははそう読めた)。がまくんが好きでたまらない感情が、全編から伝わってくるのである。そしてその最後のお話として『おてがみ』が綴られているのである。
 それを理解すると、かえるくんががまくんに出した「お手紙」の文面は、決して嘘や誇張、同情などというものではないことが分かる。かえるくんにとって、がまくんは大切な「唯一無二の存在」=「友達」なのである。
★なぜ教えてしまったのか再考
 そう考えると、「なぜ教えてしまったのか?」という謎の答えもみえてくる。「伝えたくてしかなたかった」のだろう。言いたく言いたくてしかたなかったのであろう。そう考えるとすっきりとすると私には思えるのだが、、、、。そして、それに気づいていないのは、がまくんだったのだろう。
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 それから、ふたりは、げんかんに出て、お手紙の来るのをまっていました。
 ふたりとも、とてもしあわせな気もちで、そこにすわっていました。
長いことまっていました。
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「ふたりとも、とてもしあわせな気もちで、そこにすわっていました。」は
「ふたりともかなしいきぶんでげんかんのまえにこしをおろしていました。」(冒頭部分)
に対応している文である。
★「ふたりとも」の謎
 なぜ、「ふたりとも」なのか? なぜ「かえるくん」もしあわせな気持ちになったのか?がここの謎である。
これまで読み取ってきたことから、4つのことが考えられる。

 まず1つ目、なによりかえるくんが喜んでくれたからであろう。そして2つ目、かえるくんは自分の思いを伝えられたから。だから「ふたりとも、とてもしあわせな気持ち」になれたのだろう。
 3つ目は、自分の思い(手紙の内容=がまくん親友でいてくれたことがうれしい)をがまくんがうれしく思ってくれた=受け入れてくれた=がまくんも同じ気持ちだ=気づいてくれたからであると思われる。
 最後の4つ目は、その手紙がもうすぐ来ることである。それを二人で一緒に、待てるからなのだろう。
 かえるくんは、大好きながまくんとなんでも一緒にしたいのである。そして今待っている「お手紙」は、二人をうれしい気持ちにしてくれることが分かっているのである。うれしい気分で一緒に「まだかな、まだかな」と待っていられるのである。
 
 実はかえるくんは、他のエピソードの中でも、いつもがまくんと一緒に行動しよう、いっしょに楽しもうとしていることがわかる。下の場面は、『ふたりはともだち』の最初のエピソード『はるがきた』の一節である
4月になっても冬眠から起きてこないがまくんを、かえるくんが起こそうとする場面である。

(前略)
「つまり、ぼくたちのあたらしい一ねんがまたはじまったってことなんだ。がまくん。そのことをおもってごらんよ。」
かえるくんがいいました。
ぼくたち、くさはらをとびはねながらとおりぬけられるよ。森をかけぬけることもできるし、川でおよぐこともできるんだぜ。ばんにはいまいるげんかんのまえにいっしょにすわっておほしさまのかずをかぞえるんだ。」
「かえるくん、きみがかぞえればいいさ。」がまくんがいいました。
(中略)
それじゃ それまで、ぼく さびしいよ。」がまくんはへんじをしませんでした。もうねむっていたのです。
(後略)

 上記からも、かえるくんは、何でもがまくんと一緒にしたがっていることがわかる。それはがまくんが大好きで、その大好きながまくんと一緒にした方が楽しいと言うことをわかっているからであろう。
「それじゃ それまで、ぼく さびいよ。」
ここからは、かえるくんにとって、いかにがまくんが大切な存在である「唯一無二の存在=親友」であるかがわかる。だから、一見「お節介」に見える行為も、そうではなく本当友達として助けたいと言った気持ちからなのだということがわかる。そこには、二人の関係が、決して「縦位置の関係」ではなく、「横並びの関係」であることがわかる。
そして、どちらかと言えば、相手のことが好きだと、相手が唯一無二の存在だと終始理解しているのはかえるくんなのである。『ふたりはともだち』のエピソードからもそのことは読み取ることができるし、この『お手紙』からもわかる。分かっていないのは、というか無自覚なのは実はがまくんの方なのである。
がまくんは、この『お手紙』というエピソードの中のかえるくんからの「お手紙」の文面で、ようやくそのことに気づいたのである。自分にとってもかえるくんは唯一無二の存在なのだと。

★『ふたりはともだち』の中での『お手紙』
A『ふたりはともだち』
の中の『はるがきた』
そういう意味で、この『お手紙』というエピソードは、『ふたりはともだち』の最後に納められており、その『お手紙』の最後の場面でようやくがまくんはかえるくんが親友だと気づいたという仕掛けになっているのである。『お手紙』が最後のエピソードになっているのは、そういう意味なのだということがわかる。この場面の挿絵ではじめて二人は肩を組んでいるのは、そういう意味なのだろう。(肩をくんでいる絵は『ふたりはともだち』の中で、2カ所である。
 Aは、1番目のエピソード『はるがきた』で、かえるくんが無理矢理がまくんを起こそうと、玄関まで連れてきている絵。この絵では、肩に手を回しているのはかえるくんだけ、がまくんは眠そうな目をこすっている、迷惑そうにしている絵で
B『ふたりはともだち』
の中の『お手紙』
ある。

Bはこの最後場面の絵である。①二人はお互いに腕を肩に回している。②表情はにこやかである。③かえるくんは何かを話しているようにも見える。④それはかえるくんの肩を組んでな
い方の手のしぐさからも想像できる。

C『ふたりはともだち』
の中の『お手紙』
★Cの絵について
 ところで、『お手紙』の冒頭「ふたりともかなしいきぶんでげんかんのまえにこしをおろしていました。」の絵Cは、二人でお手紙を待っている絵と同じように見えるが、①肩をくんではいない。それぞれ両手の指を体の前で所在なさげに組んでいる(?)。②表情が悲しそうである。③口をへの字に結んでいる。④二人の心情を表現するかのようにバックの花などの色が(二人の絵も色が)薄い。などの違いがある。絵本である以上、子どもたちには、これらの絵からも読み取らせたいものである。

 こうして『ふたりはともだち』という本の中で、最後の最後に『ふたりはともだち』になったことがわかる。

なんともよくできた本だと私には思える。

※お借りした絵は、
文化出版局 ミセスこどもの本 アーノルド・ロベール作 三木 卓訳『ふたりはともだち』 発行所学校法人 文化学園 文化出版局 
からです。

2013年7月30日火曜日

「お手紙」 その2

「お手紙」その2(展開部)

 さて、展開部である。
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 かえるくんは、大いそぎで家へ帰りました。えんぴつと紙を見つけました。紙に何か書きました。紙をふうとうに入れました。ふうとうにこう書きました。
「がまがえるくんへ」
 かえるくんは、家からとび出しました。知り合いのかたつむりくんに会いました。
「かたつむりくん。」
かえるくんが言いました。
「おねがいだけど、このお手紙をがまくんの家へもっていって、ゆうびんうけに入れてきてくれないかい。」
「まかせてくれよ。」
かたつむりくんが言いました。
「すぐやるぜ」
それから、かえるくんは、がまくんの家へもどりました。
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★伏線
 この場面では、2つの謎がクライマックス場面への伏線となっていることがわかる。
 1つは、「お手紙」の中身である。
「かえるくんは、おおいそぎで・・・」から「・・・~ました。」「ました。」が続く書かれ方からは、かえるくんが、迷ったり、悩んだり、考えたりせずに、素早く手紙を書いているように感じられる。かえるくんのがまくんに対する思い、人のよさが読み取れる。そして封筒の表に「がまがえるくんへ」と書く。ここは読み手である読者へ、手紙の内容に興味を持たせているところである。

 2つ目の謎は、なぜかたつむりくんだったのか?ということである。謎であるとともに、面白いところでもある。
かえるくんが、こんなにも急いで帰り、あわてて手紙を書いた理由は、一刻も速くがまくんにお手紙を届け、悲しんでいたがまくんに、喜んでもらいたかったからにほかならない。
ところが、かえるくんが手紙を託した相手は、かたつむりくんであった。かたつむりと言えば、その進む速さはゆっくりである。この「ゆっくり」がクライマックスの伏線になってくる。
まず、自分でがまくんに届けるという方法もあったはずである。もちろん、それは、がまくんが言うところの「お手紙」は、単に封筒に入った手紙ということではなく、郵便として、差出人(今回はかえるくん)がいて、配達人(かたつむりくん)が運んで、それを受け取るという(第三者の介入・公的な社会的な制度・大人社会)ことだということをかえるくんも分かっていたからに他ならない。
かたつむりくんに頼んだのは、偶然だったのか、必然だったのか?
もし偶然なら後の展開を考えると、ものすごく幸運だったと言える。もし最初から「かたつむりくん」に頼むことを考えていたとしたら、後の展開はかたつむりくんの意図通りだと言える。「知り合いのかたつむりくんに会いました。」であるから、偶然出会ったとも読めるし、訪ねて会ったとも読める。流れ的には、偶然に出会ったと読める。かえるくんが家を出て最初に出会ったのが、かたつむくんだったいうことだろう。
それにしてもかえるくんは、かたつむりくんが遅いということを考えなかったのだろうか。それは、かたつむりくんがゆっくりだと言うことに、気づかないくらい一生懸命であったのだろうと考えられる。ここから読み取れるかえるくんの人物像は、そそっかしく、あわてものもだと言える。もちろんそれは、がまくんを一刻も速く喜ばせたいということであるから、友達思いであり、優しいということの裏返しでもある。なんとなくほのぼのとした人の良さも感じられる。この人の良さ、そそっかしさが、二人で手紙を待つという、何とも言えない喜びの時間をもたらすことになるのである。
 そして、それを受け取るかたつむりくんのセリフ「すぐやるぜ」も、なんとも間が抜けているというか、面白いセリフである。

かえるくんのそそっかしさは、次の場面でも読み取ることができる。
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 がまくんは、ベッドでお昼ねをしていました。
「がまくん。」
かえるくんが言いました。
「きみ、おきてさ、お手紙が来るのを、もうちょっとまってみたらいいと思うな。」
「いやだよ。」
がまくんが言いました。
「ぼく、もうまっているの、あきあきしたよ。」
 かえるくんは、まどからゆうびんうけを見ました。かたつむりくんは、まだやって来ません。
「がまくん。」
かえるくんが言いました。
「ひょっとして、だれかが、きみにお手紙をくれるかもしれないだろう。」
「そんなこと、あるものかい。」
がまくんが言いました。
「ぼくにお手紙をくれる人なんて、いるとは思えないよ。」
 かえるくんは、まどからのぞきました。
 かたつむりくんは、まだやって来ません。
「でもね、がまくん。」
かえるくんが言いました。
「きょうは、だれかが、きみにお手紙くれるかもしれないよ。」
「ばからしいこと、言うなよ。」
がまくんが言いました。
「今まで、だれも、お手紙くれなかったんだぜ。きょうだって同じだろうよ。」
 かえるくんは、まどからのぞきました。
 かたつむりくんは、まだやって来ません。
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 がまくんをびっくりさせるのであれば、黙っておいて驚かせるのが効果的でありセオリーである。しかし、かえるくんは、だまって待つということができず、がまくんに期待させようとするのである。かえるくんは、がまくんが喜ぶ姿を見たい気持ちを抑えられないのだろう。
ここからは、かえるくんのそそっかしさとともに幼さ、幼さから来るであろう(言い方は悪いが)ある種の愚かさと同時に人の良さも感じられる。

 一方で、がまくんは、ふてくされているままである。いい加減気づいてもよさそうなものである。あるいは、「なんでそんなこと言うの?なんでそう言えるの?」と問いただしてもよさそうである。がまくんの悲しさ、怒りがそれほど大きいとも言える。またここにも幼さが感じられるし、幼さから来る愚かさも感じられる。

 かえるくんは、まどからのぞきました。かたつむりくんは、まだやって来ません。そして二人の3回のやりとりの間に、かえるくんは、3回もまどのそとを見ている。かたつむりくんが来るのを今か今かと待っているかえるくんのはやる気持ちがわかるところである。
他の文末が「ました。」であるのに対して、「まだやって来ません。」となっている。「まだやって来ませんでした。」ではない。ここだけが断定的で言い切りになっているところにも着目したいところである。

 この場面の二人のやりとりは、大変楽しく、おもしろい場面になっている。この場面、読み手によって
「あ~ばれちゃうよ~」「なんでそんなこと言うんだよ~」あるいは「教えてあげればいいのに~」
「なんでがまくんは気づかないんだ~」
「カタツムリ君遅いよ~」「だからカタツムリ君なんかにたのむからだよ~」
「この二人、なんだかおもしろ~い。」
はらはらする子もいれば、笑ってしまう子もいるだろう。中にはイライラする子もいるかもしれない。子どもによって、様々な反応が予想される。
二人のキャラクターと、そのぶつかりそのものが面白いところである。名(迷)コンビと言える。
それと同時に

「がまくん。」(3回目だけ「でもね、がまくん。」)
かえるくんが言いました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」(強い拒否)
がまくんが言いました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(理由というか、、、) 
 かえるくんは、まどからゆうびんうけを見ました。かたつむりくんは、まだやって来ません。

パターンの繰り返しであり、その繰り返しの面白さ(書かれ方・文体)などが面白さの要因となっている。

2013年7月27日土曜日

おおきなかぶ 

「おおきなかぶ」まず教材について

「おおきなかぶ」の教材の変化・成り立ちついては、静岡大学教育学部研究報告『「おおきなかぶ」の日本への紹介と変容-成立』に詳しい。
(以下当ブロブが面白いと思ったところを抜粋。なお、この論文では、ここでは取り上げないが、最初に日本へ紹介された初版訳から紹介されており興味深い論文である)
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前略)ロシアにおける昔話の主人公は圧倒的におじいさんとおばあさんであるらしい。おじいさん(ヂエートカ)、おばさん(バープカ)とならんで、まごむすめ(ヴヌーチカ)となり、子犬(スーチカ)も、語尾に同一の接尾語を持つことから、問題の「かぶ」も、レーパという一般的な名詞ではなく、レープカという語が選ばれるという。しかもこれらはすべて語頭にアクセントがある上に、二音節で表現れる。語りだしの『お爺さんが種をまきました』という文章は、『蕪』と『お爺さん』の語呂合わせによって生まれたのだ。『男は度胸、女は愛嬌のようなものである」(中略)
そして、このお話は一人ずつ登場人物が増えて、同じ行為を繰り返す「累積民話(昔話)」であり、ロシアの民話には多いタイプであるという。そのため、語り口調は、二拍子のアクセントが規則的に並び、強弱の繰り返しというリズムが生まれる。
こうした「累積民話(昔話)」は、鎖状につながったものが切れて、もとの状態に戻る、ことが重要なのだそうである。(後略)
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※「おおきなかぶ」の訳・絵本・教材には様々なものがある。絵本で確認をすること、読み比べてみることも研究する上では大切であると思う。内田莉子訳が有名であるが、教科書版の西郷竹彦訳との違いは様々に研究されてきている。どちらが優れているのかは何とも言えないが、ここでは、あくまでも教科書版(光村)を絵本的に取り上げ考察していくこととする。

★「おおきなかぶ」教材研究

一年生1学期の有名な教材である。
まずは、表層よみから。
学年が下がれば下がるほど表層よみを重視していかなければならない。特に音読は、繰り返しさせたいものである。必要なら劇化もさせる(ここでは、劇化については述べないこととする)。しかし、ここではあくまでも「読み」の領域として教材研究を進めてみたい。

0, 表層

最初は「表層よみ」である。
範読・音読
ここでは、まず範読することで、子どもたちを物語りの世界へ導きたい。そのためにリズムをつけてテンポ良く範読したい。
音読は、一文ずつオウム返しに音読させたり、場面ごとに音読させたり、役割交代しながら読ませたりと、子どもたちが飽きないような工夫も必要。
そして何よりこの作品のよさ、面白さは、リズムである。だとすると、十分に音読をしリズムの面白さを体験させることは重要な学習であると言える。
※音読してみると、以外とリズムがとりにくいように私には感じられる。そこが西郷訳への批判の一つになっている。

言葉の学習
 次に言葉について学習を進める。わからない言葉があれば子どもたち質問させたりする。以下の言葉については、読みを進めるために知っておかなければならない言葉である。これらは、たとえ子どもから出されなくても、教師から取り上げて指導していく。(教師の取り立て指導と呼ぶ)
 まず「かぶ」についてである。教科書に絵があるので、子どもたちから出されないかもしれないが、「かぶ」は、クラスの全部の子どもたちにとっては身近な存在とは言いがたい。そこで、教科書の絵はもとより、写真や実物などを使って教えたい。
 「かぶ」は中央アジア原産、弥生時代から日本にもあったそうである。日本では3~4月まき時。40~60日で収穫できる。しかし、ここで言う「かぶ」は、日本で認識しているそれとは違うようである。サークルの仲間が調べたところによると、ロシアの「かぶ」は本当に甘いそうである(食べてみたいものである)。しかも、ロシアの多くの家庭で食されている「ボルシチ」に欠かせない食材らしい。
そうだとすると、私たちが抱いている感覚と全く違った感覚であろうと思われる。より身近で、より大切な食材なのだろう。このことを子どもたちに分かるように、分かる範囲で教える必要がある。
また、普通の「かぶ」おおきと比較することで、この「おおきなかぶ」が、文字通りそうとうの大きさのかぶ、文字通り「おおきなかぶ」でことがわかる。
 次に結末に出てくる「とうとう」という言葉である。辞書によると「(副)ついに、結局(広辞苑)」だそうである。ここでは、「とうとう」を使って単文作り(発表させればいいと思う)をさせたい。
この他「まご」についても、理解していない子がいる場合は理解させる。また「おじいさん」「おばあさん」については、一般的なイメージ、例えばお年寄り、優しい、、、程度の共通理解をさせたい。

1, 構造よみ

中学年以降であれば、ここで「構造よみ」へと進む。しかし1年生の1学期、最初の物語である。そこで、「構造よみ」へつなげていくためのステップとしてここでは「起こったこと調べ」と「変わったこと調べ」をする。これらは、子どもたちに、「物語(事件)の流れ」や「プロット」を掴むための視点などを育てることが目的である。それらの視点は、後の「構造よみ」につながるものでもある。
また、「登場人物(主人物・副人物)」の確認(一年生ということで、『主人公』という言葉で教えてもいい)なども行う。

どんなことが起こったかな?(起こったこと調べ)
・おじいさんがかぶのたねをまいた
・かぶがおおきくなった
・おじいさんがかぶをひいたけど、ぬけなかった。
・おじいさんは、誰を呼んできたの?  なぜよんだの?(以下同様)
・おじいさんがおばあさんをよんで、かぶをひいたけど、ぬけなかった。
(以下同様)
一問一答形式でいいので、質問しながら流れをつかませる。誰が、誰をよんできたのかをはっきりさたい。

物語の中で変わったことは?(変わったこと調べ)
・一人ずつ増えていく。
・一人→六人
・くる人(動物)がだんだん小さくなる。力が弱くなる。
・だんだん疲れてくる=力が入らなくなる。
・「ぬけません」→「とうとうぬけました。」
・種→おおきなかぶ
・けれども→それでも→やっぱり→まだまだ→なかなか
特に最後の「けれども」→「それでも」→・・・は、行為ではなく表現の変化であるため、子どもたちから出させるのは難しい。そこで「同じ言い方のくりかえし」が続くことを気づかせ、その中で変化している言葉に着目させるなど、工夫が必要だと思われる。またの「面白いところ」を終えてから、「繰り返しの中の変化」に着目させてもいいかもしれない。

出てくる人は、何人?誰?(主人公という言葉の指導)
六人(動物も、人物としてあつかう) おおきなかぶ
主人物は誰であろう。おじいさんか? だとすると副人物は残りの5人ということになる。

この物語の面白いところは?
A繰り返しの面白さ
1「うんとこしょ、どっこいしょ。それでもかぶはぬけません」のセリフの繰り返し
2一人ずつ増えていくが、同じ行為をくり返していくところ
B一人ずつ増えて、同じことをくり返すところ。
 1おじいさん
 2おじいさん、おばあさん
 3おじいさん、おばあさん、まご
 4おじいさん、おばあさん、まご、いぬ
 5おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ
 6おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみ
C引く人がだんだん小さくなるところ。
D最後に一番小さなねずみがひいたらぬけたところ。(おち)
以上のようなことが考えられる。自由に発表させたい。この他が出されても、共感的・肯定的に取り上げていく。

2, 形象よみ

★導入部と終結部を中心に読み進める。その際、文章だけでなく、絵を手がかりとして読んでいく。一年生ということもあり、助言を多用しながら進めていく。(よってここでは、助言のヒントとなるような指導言を入れながら進める。)
光村図書教科書よりお借りしました

① 時(絵から季節を読む)
季節はいつかな? 絵の何を見たらわかると思しますか?=おじいさんの服装=長袖、生地も厚そう。
→だから、夏は半袖だから、夏じゃないよ。冬だよ。
→長袖を着るのは冬だけかな?
かぶの種をまく時期はいつ頃か知ってる?=春(日本では3~4月)  40日~60日で収穫

② 場
ここはどんな場所かな?絵をみて考えて?
家の様子→山小屋みたいな家。日本の家とはちがう。=外国
回りに他の家がない=いなか
広い畑がある
 木は見えないから森ではない。高原?
中心に読み取らせたいのは、人物である。時・場は、確定する要素はない。そこで時・場については軽く扱うか、時には省略してもいいと思う。

③ 人物
★おじいさん・・・男、年寄り
◎絵からわかること
白いひげが長い=お年寄り
手を見てごらん。手や指からわかることは?=手のしわ、指の関節が太い→働き者。力が強そう。お年寄り
顔の色が赤い=日に焼けているのかな→働き者。農夫。白人(日本人ではない)
種のまき方=腰をまげている→粒一粒丁寧に種をまいている。
おじいさんの服からわかることはない?
=ながい上着。服が汚れている。破れている。布施。帽子(ハット)。日本の服とちがう。作業するための服。
=ふせをして使っている→貧しそう。物を大事にしている。
=作業をするための服→きっとおばあさんがしてくれたんだよ→優しいおばあさんじゃないかな
Aおいいさんの気持ちは?一生懸命。大事に育てよう。
Bおじいさんはどんな人?働き者
        
◎セリフからわかること
・「あまいあまいかぶになれ」「あまいかぶになれ」とどうちがう?
おじいさんのあまいかぶになって欲しいという気持ちが強いのがよくわかる。
・「おおきなおおきなかぶになれ」「おおきなかぶになれ」とどうちがう?
・おじいさんは、なぜかぶの種をまいたのだろう?
※以下同様に絵を中心に人物形象を読み取る(おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみ)
光村図書よりお借りしました
★まご・・・教科書の絵では、まごは笑顔であり、あきらかに面白がっている。楽しんでいると言ってもいい。
→まごは、おじいさんやおばあさんと一緒にかぶをぬくのが楽しい。
いかにも子どもらしい反応だと言える。
→まごは、おじいさんやおばあさんが大好き。
★出てこない人物・・・まごの両親。

④ 事件設定 
・おじいさんは何をしましたか?わかる文に線を引きましょう
おじいさんが、かぶのたねをまきました。
・その種はどうなるのですか?
あまいあまい、おおきなおおきなかぶになりました。
・どのくらい「おおきなかぶ」になりましたか?
おじいさん一人では、ぬけないくらい。だから、おばあさんたちをよぶのですね。
※「事件設定」という言葉を教える必要はない。人物の読みの流れで、読んでいく。

⑤ 話者
(外の目)省略してよい。

⑥ 最後の一文
A「とうとう かぶは ぬけました。」
(ついに かぶは ぬけました。)→話者がぬく側に寄り添っている。「やっとぬけた」
(けっきょく かぶは ぬけました。)→抜けたことに対して、否定的な感じがしないか?
「とうとう」に違和感はないか?
B「とうとう かぶ ぬけました。」「とうとう かぶ ぬけました。」の違いは?
なぜ「は」なのか?「が」とどう違うのか?
「ぬけてしまった」的な感じがどうしてもするのですが、、、、深読みしすぎか、、、。
※ここも流れの中で、、、、。

3, 主題へのアプローチ

① 一文で書いてみよう(~が・・・によって〇〇した話)
おじいさんが、おばあさんやまごやいぬやねこやねずみと一緒におおきなかぶをぬく話。
おじいさんが、おばあさんやまごやいぬやねこやねずみに助けられて(ちからをかりて)おおきなかぶをぬく話。

② 題名よみ
・「おおきなかぶ」意外に考えられる題は「おじいさんと仲間たち」どうちがうのか?
題名からわかることは、物語の中心は「おおきなかぶ」だということ。登場人物に名前がない、個性が特にないことからもそう考えられる。だとすると最後の一文は、「ぬけてしまった」的な意味がないこともないのかなと、、、。はやり深読み過ぎか、、、、。

③ 物語に関わる疑問?
・この後かぶをどうしたのか?
・かぶが象徴するものは?(これは一年生には無理か?)
・なぜかぶは一つか?他のかぶは?だから貴重なのか。考えすぎか。
・いぬやねこやねずみはなぜ手伝ったのか?「面白そうだから」と読むべきか?
・なぜ名前がないのか?
・お父さん、お母さんはどうしたのか?
※読む際に、なにより大切にしたいことは、子どもたちが「?」を浮かべることができるようにしていくことだと思う。それが物語の面白さに繋がるし、読み深めるヒントになるからである。子どもたちの「?」には、答えが出ないものもあると思う。それはそれとしてオープンエンドの話し合いでよい。

④ 好きなことろは(いいな、気に入った)、どこですか?理由も言いましょう。

⑤ いやだなと思うところはどこですか?理由も言いましょう。
※⑤は批評へのアプローチのつもりだが、④まででいいのかもしれない、、、。

2013年7月26日金曜日

「お手紙」その1

「お手紙」その1 謎を追究する面白さを

「お手紙」は謎の多い物語である。この物語はちょっと変わった始まり方をしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
がまくんは、げんかんの前に、すわっていました。
かえるくんがやって来て、言いました。
「どうしたんだい、がまがえるくん。きみ、かなしそうだね。」
「うん、そうなんだ。」
がまくんが言いました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
★これは、「お手紙」の冒頭部分の一節である。
 まず「がまくんは、げんかんの前に、すわっていました。」からして謎である。玄関の前に座るということは、あまり見かけない行為である。なぜわざわざ玄関の前に、座っていたのか?
しかも、「悲しそうな顔」をしているのである。やってきたかえるくんはあきらかに知り合い、いや友達。普通なら、「おはよう・こんにちは」とか「やあ」とかお互い挨拶をかけ合いそうなものである。しかし、やってきたかえるくんはいきなり「どうしたんだい」と問いかけている。それほど悲しそうな顔=雰囲気を、がまくんは醸し出していたと考えられる。言いかえると、がま君は、誰にでもわかりやすく、もっと言うと「これみよがし」に自分の悲しさを訴えていたのである。
「うん、そうなんだ。」かえるくんの問いかけにがまくんは答える。やはり誰かに聞いて欲しかったのであろう、即答しているようにみえる。普通なら無言の場面である。このやりとりから読めるがまくんの人物像は以下のようなものであろう。

幼い。(がまくんの見え見えの雰囲気は、いかにも幼い子どもがとりそうな行為である。)
それは「甘えん坊」だとも言える。
あるいは、わがまま。(これは、年齢的なものなのか、性格的なものなのかは判別できない)
そうとう深刻な出来事ががまくんの身にふりかかった。(謎。読者を引き込むしかけになっている)

この他、いくつかの疑問や謎もある。
果たしてがまくんは、かえるくんが視界に入る前から悲しそうな顔をしていたのか?
もしそうだったとしたら、他の人はがまくんに声をかけたりしなかったのか?それはなぜか?
かえるくんが視界に入ったので、悲しそうな顔をしたとすると、それはなぜか?

もし③であるとすると、そこからがまくんの人物像や二人の関係が読めてくることになる。
また、これは絵本でる。絵から読めるがまくんの人物像もある。また「がまがえる」であるから、あまり動かない、動きが遅いところから、のっそりした感じ、ぼーっとした感じなどがわかる。(くわしくは省略)

★さて冒頭部分をさらに読み進めてみよう
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今、一日のうちのかなしい時なんだ。つまり、お手紙をまつ時間なんだ。そうなると、いつもぼく、とてもふしあわせな気もちになるんだよ。」
「そりゃ、どういうわけ。」
かえるくんがたずねました。
「だって、ぼく、お手紙、もらったことないんだもの。」
がまくんが言いました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 なんとも理屈っぽい言い回しである。また「かなしい時なんだ。」「つまり」「時間なんだ。」「そうなると」などという言い方を、話し方を、がま君は普段からしているのだろうか?
このセリフから、がまくんは、理屈っぽく、少し変わった子(子だとして)だと言えそうである。また、「ふしあわせな気もち」からは、そういう言葉を使うことへのあこがれというか、ちょっと背伸びした感じも受ける。普通は、友達との会話では使わない言葉であることは間違いない。それは「もらったことないんだもの。」という言い方の幼さかと合わせて考えるといっそう浮き立ってくるように思う。また、この言い方からは、少しひがみっぽい感じがする。

さて、続きを進めよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いちどもかい。」
かえるくんがたずねました。
「ああ。いちども。」
がまくんが言いました。
だれも、ぼくにお手紙なんかくれたことがないんだ。毎日、ぼくのゆうびんうけは、空っぽさ。お手紙をまっているときがかなしいのは、そのためなのさ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 なんと、「だれも、ぼくにお手紙なんかくれたことがないん」ことが悲しさの原因だということである。読み手からすると、少しばかり大げさすぎやしないかという感じもする。スネている感じである。手紙をもらったことがないというだけで、そんなに不幸せな気持ちになるのは、少し大げさではないかという違和感である。
ここも謎だらけである。
なぜ手紙がこないことがそんなに悲しいのか?(なぜそんなにお手紙が欲しいのか?)
なぜ自分から出そうとは思わなかったのか?出さなかったのか?あるいは出したけど返事がなかったのか?
そもそも、誰から、どんな手紙がくると思っているのか?きて欲しいのか?
この読み手に湧く「違和感」「謎」は、この物語ではとても重要な読みへとつながるのではないかと感じる。
これらはどう考えればいいのか?そして、そこから読める人物像は、、、、。

 それにしても、がま君にとっては、この悲しさは、がまくんにとってそうとうな悲しさのようでる。それは「ああ、いちども。」「お手紙なんか」「空っぽさ」などの拗ねたような言い方から容易に想像できる。
また、がま君は、そうとう甘えん坊でさみしがりやなんだろうと感じる。しかし、どこか憎めない感じ、助けてあげたくなる感じも私には感じられる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ふたりとも、かなしい気分で、げんかんの前にこしを下ろしていました。
すると、かえるくんが言いました。
「ぼく、もう家へ帰らなくっちゃ、がまくん。しなくちゃいけないことが、あるんだ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんながまくんに、かえるくんは同情している。かえるくんは、いいやつなのだろう。
「いちどもかい」と
かえるくんが悲しい気分になったのは
がまくんにお手紙がこないことなのか?
お手紙がこなくて悲しんでいるがまくんのことを思ってなのか?
そんながま君の気持ちを知らなかったこと、気づいてやれなかったことなのか?
自分が、がま君に一度も手紙を出さなかった出したことがなかったことへの後悔からなのか?
の、どれなのだろうか?いくつかの思いが重なっているのだろう。
かえるくんは、玄関に座っている悲しそうな顔のがまくんを見てすぐに「どうしたんだい。」と心配している。そして、その理由を聞きながら、かえるくんもまた「かなしい気分」になっていく。そんな友達思いのかえるくんであるが、この場面では、けっして励まそうとはしていない。なぜなのだろうか?「いちどもかい。」と尋ねているところから、かえるくんはお手紙をもらったことがあったのであろう。だからなのかもしれない。あるいはもらったとこがなかったとして、自分はそれを考えたことも悲しんだこともなかったのであろう。
そう考えると上記した③④の思いがあったことは確実だと言えそうである。あるいは、「いちどもかい」というかえるくんの何気ない言葉が、さらにがま君を傷つけたことも気づいていたのかもしれない、、、。

そのかえるくんは、この場面での最後のセリフ
「ぼく、もう家へ帰らなくっちゃ、がまくん。しなくちゃいけないことが、あるんだ。」
と言う。まず前半を普通の言い方に直すと「がまくん、ぼく、もう家へ帰らなくっちゃ。」である。比較すると、急に思いついたような感じである。そして、「どうしても帰りたい、帰らなければならない」ことを思いだしたという感じがする。それは「しなくちゃならないこと」があるからとなる。「することがある」あるいは「したいことがある」と比較すると、「どうしても、なにがなんでも」といった思いが込められている。後で出てくるのだが、かえるくんは、家へ帰ってがまくんにお手紙を書こうと思いついたのである。だから「どうしても」であり「なにがなんでも」なのだろう。ここから物語は、結末へ向けて展開していくことになる。
★ここからわかるかえるくんの人物像は、
人がいい。優しい。
思いついたらじっとしていられない性格。
がまくんのことが大好き。友達おもい。
といった感じであろう。


※1学期にサークルで提案したものを元に、みんなで検討したこと、そして跡上先生のアドバイスを受け、もう一度「お手紙」について考えみたいと思いました。そこで、これまでとは書き方を変えて、少しずつブログにアップしていきたいと思います。

2013年7月24日水曜日

「生き物はつながりの中で」 再考

前回「生き物は・・・」についてアップしたところ、うれしいことに反論のコメントがありました。以下
★投稿されたコメント
この説明文の、文章構成図は
    ①
    |
    ②

   ③④⑤

    ⑥
    |
    ⑦ だと思います。①は話題提示と呼びかけ
             ②が問い  ③④⑤が説明
             ⑥が答え
             ⑦が筆者の主張だと思います。
いかがですか?

前文が私の提案では1段落だけなのに対して、1・2段落ではないかという反論です。以下、再考したものを載せてみます。ここでも私は1段落だけを前文としています。1学期に実践したのですが、子どもたちも1段落だけだと言いましたが、、、、。ぜひ検討してみてください。そしてより正確な教材研究にしていきましょう。
なお、今回は吟味よみまで入れています。


★構造よみ
前文1  本文2~5  後文6 7
◎2段落は前文か本文かという観点。
・前文には問題提示=全体にかかわる問題 がある。1段落に問題らしき文が2つ(➃文・⑤文)ある。よって1段落は前文。
・ところが2段落にも問題らしき文(⑩文「しかし、本物のイヌとロボットのイヌは本当に同じでしょうか。」)がある。これは1段落➃文「ロボットのイヌは本物のイヌとはちがいます。」という結論=前提と矛盾するため、これは論を進めるための「なげかけ・よびかけ」と考えられる。
・そもそも2段落は、説明がはじまっている。よって2段落は本文となる。
◎6段落は、本文か後文かという観点。
・6段落はまとめであり、後文。7段落は筆者の考え主張が書かれており後文となる。
◎本文をいくつに分けるか  本文Ⅰ(2段落3段落)    本文Ⅱ(4段落)     本文Ⅲ(5段落)
・3段落の最後から2文目が、「・・・生き物の特徴です。」と一つの結論を述べているので、3段落で切れ4段落から別の説明がはじまることがわかる。
・4段落の最後は「・・・生き物らしいところであり、ロボットとのちがいです。」とここも一つの結論を述べているので、4段落で切れ5段落から別の説明がはじまることがわかる。
・5段落「次に」ではじまる。よって違う観点での説明であることがわかる。

★要約読み
前文
1段落の要約
説①イヌ型ロボットを知っていますか。
説②
説③でも、ロボットのイヌは本物のイヌとはちがいます。
柱⑤どこがちがうのでしょう。(柱的ではあるが、⑥でまとめられているとも言え、説明だとも考えられる。
 +・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
柱⑥そのちがいを考えながら、生き物の特徴をさぐってみましょう。
◎前文の要約
ロボットと本物のイヌのちがいを考え(ながら)、生き物の特徴をさぐる(ろう)。32文字

本文(本文Ⅰ 本文Ⅱ 本文Ⅲ)
2段落=説明 本物のイヌの説明
 ↓   ①書き出し
②~➃本物のイヌの説明
⑤生き物の説明 このように、生き物は、体外から必要なものを取り入れ、体内から不要なものを出して、内と外とで物質のやり取りをしています。
⑥~⑨ロボットのイヌの説明
  1. 次への問い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3段落=柱
①~⑤本物のイヌの例
    ⑥⑦人間の例
    ⑧⑨ロボットの例
柱⑩外から取り入れたものが自分(身体)の一部になる(り)、(そのようなつながり方で)外とつながっているのが、生き物の特徴です。
◎本文Ⅰの要約
外とつながっているのが、生き物の特徴だ。(20字)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4段落=柱
①~⑥本物のこと
柱⑦変化・成長しながら、一つの個体として時間をこえてつながっている、これも生き物の特徴です。
 ⑧説明
◎吟味
主語(本物のイヌは)  述語(つながっている)  
何と?「個体として」体の細胞が昨日から今日、明日へとつながっていることを個体として個体としてつながているという言い方でいいのか?
「つながる」という言葉は「何かと」「何か」が「つながる」というふうに2つ以上の者をつなげる時に使うのだが、、、。昨日のチロと今日のちろはつながっているというふうな言い方か、ちろ自身の体が一生を通じて変化しているけれどつながっているか、、、、。本来「生き物の特徴」から言うと、「変化・成長」することでいいのではないか?それを「つながっている」とするのは無理がある。
◎本文Ⅱの要約
一つの個体としてつながっているのも(が)、生き物の特徴だ。(26字)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5段落=柱 ①~⑥生まれ方の例(見てみましょう→例)
柱⑦このように、過去や未来の生き物たちとつながっていることも生き物の特徴です。
⑧説明
本文Ⅲの要約
過去や未来の生き物たちとつながっているの(こと)も、生き物の特徴だ。30

◎本文の要約
本文Ⅰ要約「外とつながっているのが、生き物の特徴だ。」(20字)
本文Ⅱ要約「一つの個体としてつながっているのが、生き物の特徴だ。」(26字)
本文Ⅲ要約「過去や未来の生き物たちとつながっていることも、生き物の特徴だ。」(31字)

後文
6段落
説 ①本物のイヌとイヌ型ロボットを比べながら、生き物の特徴を見てきました。
説 ②生き物は、外の世界とのつながり、一つの個体としてのつながり、長い時間の中で過去の生き物たちとのつながるというように、さまざまなつながりの中で生きていることがわかりました。
柱 ③このつながりこそが、生き物の生き物らしいところで有、ロボットとのちがいです。

柱文だけの要約 (この)つながり(こそ)が、生き物とロボットのちがいだ。20
  ↓(指示語)
この=外の世界とのつながりや、一つの個体としてのつながりや、過去の生き物たちとのつながりというような、さまざまな
    ↓(挿入)
外の世界とのつながりや、一つの個体としてのつながりや、過去の生き物たちとのつながりというような、さまざまなつながりこそが、生き物とロボットのちがいだ。
  ↓前文の2つの問題提示にあった答えにすると
  ◎6段落の要約
外の世界とのつながりや、一つの個体としてのつながりや、過去の生き物たちとのつながりというような、さまざまなつながりこそが、生き物の特徴で、生き物とロボットのちがいである。

7段落 
理由①あなたは、今日もあなたであり、明日もあなたであり続ける、たった一つのかけがえのない存在です
  理由②と同時に、あなたは過去のすべてとつながり、未来へもつながっていく存在なのです。
  理由③また、地球上の他の生き物ともつながっています
   ↓    (①+②+③)→(➃+⑤)
          (理由) → よびかけ(筆者の主張)
  柱 ➃そう考えると、今、あなたが生き物として生きていることが、とてもすてきに思えてきませんか。
   +   ➃要約「あなたが生き物として生きていることが、すてきに思える。」
  柱 ⑤そして、自分自身のことが大切であるように、他も大切であるという気持ちになりませんか。
    ⑤要約「自分自身と同様、他も大切であるという気持ちになる。」
7段落の要約➃+⑤
「あなたが生き物として生きていることが、すてきに思え、自分自身と同様、他も大切であるという気持ちになる。


★吟味よみ(観点①本分と理由の整合性  観点②理由と主張の整合性、納得感)
吟味観点①(①②③の下線部分が本文からのつけくわえ、おきかえになっている。ずれを確認して、吟味する。)
①は本文のどこのことなのか?なぜ自分であり続けることがかけがえのないことなのか?納得できるか?
②は「存在」の意味を理解できるかどうか。存在とはなにか?なぜわざわざ存在と言っているのか?
③は、本文のなんとの置き換えか?「外の世界とつながり」のおきかえ。これがわかるかどうか?
吟味観点②
「あなたが生き物として生きていること」=「つながっている」「かけがえがない」ということであろうと読める。「かけがえのない」=4段落「自分自身とのつながり」でる。このために無理筋で入れたとも思える。
ここを「つながり」を使って述べればよかったのではないか。
総評

基本的に「つながり」にまとめようとした点に若干無理が生じたのではないか。4段落「一つは自分自身の中でのつながり。」が無理筋か。そのために7段落で順序を入れ替えてあるのかもしれない。

※なお、前回の教材研究は何年も前のもので、教科書の教材自体が手直しされているようです。それもあり今回再び再考してみました。

2013年5月10日金曜日

はじめての構造よみ 「カレーライス」

 はじめての物語カレーライス。その構造よみ。水戸黄門などを例に出し、おもしろおかしく構造を説明。次の時間いよいよカレーライスの構造読み。
 発端について考え会っている時でした。なんせはじめての経験。しっかりと発端とは何かを理解させたいと思いました。そこで、
「この物語は、どんな物語かな?一言で言うとすると」
こう子どもたちに問いかけることからはじめました。
子どもたちは、班会議を経て次のような4つの意見を出してきました。
①    けんか
②    けんかのきっかけ
③    きずな
④    なかなおり
「いいねえ、きずなかあ、深いとことまで考えた意見だね。でも、これ、順番が変じゃない。この四つを物語に会うように並べかえるとどうなる?」
「けんかのきっかけ→けんか→なかなおり→きずな」
子どもたちは口々に言いました。
「じゃあ、発端に指標にそって考えてみよう。まず、何かと何かの出会い。このけんかは、だれとだれのけんか?」
「ぼくとお父さん」
「そうだね、ということは、この二人が出会うところが発端だね。それはどこ?」
こうして、発端は「お父さんウィークの初日」という案が出てきました。
もちろん、「けんかした状態のぼくとお父さんの出会い」という意味です。
そこまで、実はお父さんは登場しないこともページを追いながらみんなで確認しました。
そして、けんかをした状態で迎えるお父さんウィークがはじめてのこと=いつもと違うことであること。発端まで(導入部)は、けんかになった理由の説明であること(導入部には説明が書かれていること)などを確認しました。


特に戸惑うこともなく、子どもたちと一緒に考えなら進めました。「発端」に関わり指導しなければならない学習内容について、おおむねふれることができたと思います。

2013年5月7日火曜日

「動いて、考えて、また動く」 高野 進   教材研究

1,    表層
①    語句 ぎもん・工夫・うでで走る
②    指示語
1段落
4文「そのように」→運動でも勉強でも、「まず動く、そして考える」ことが大切
2段落
2文「それは」→当時取り組んでいた走り方は
5文「この方法」→(「ひざを高く上げて」「あしを思い切り後ろにける」)つまり大きな動作で走る
3段落
4文「このとき」→すばらしい結果が出たとき
4段落
1文「それまで」→大きな動作で走っていたとき
3文「それは」→ひざを高く上げること
   5段落
1文「それから」→地面を強くふむことを意識して行うことが大切だと気づいてから
    3文「その力で」→あしを後ろにける
    4文「これでは」→あしを後ろにけって、その力で前にすすもうとすると
    4文「そのあしを」→後ろにのこって
6段落
1「このことは」→
   5「このほうが」
   6「これでは」
7段落
1「このように」
2「そうすることによって」→自分にあったあしの動かし方や、うでのふり方を考えることによって
6「そうでないか」→「何がむだでないか」
  8段落
1「こうした経験」→1段落~7段落
2「そこから」→「まず動く、そして考える」


③    接続後
2段落
「つまり」
「けれども」
「そこで」


1,    構造よみ

    A案     B案       C案
前文 1段落     1段落     1~2段落
本文 2~7    2~6段落    5~6段落
後文 8      7~8段落    7~8段落

★本文の段落関係  2←【(3←4)+5+6】+7
(問題意識)
2段落 柱 疑問  ①「ひざを高く上げて」 ②「あしを思い切り後ろにける」

(大きな動作で走るAひざの上げ方について)
3段落 柱 「そこで」ひざを高くあげる走り←
4段落 説 「後から考えて分かった」3段落の説明
    (大きな動作で走るBあしのけりについて)
5段落 柱 「もう一つの」あしを思い切りける走り方
(大きな動作で走るCうでのふり方について)
6段落 柱 「あしの動きと同時に、うでのふり方も」

(本文のまとめ)
7段落 柱 「このように」

2,    論理よみ

1段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (柱)運動でも勉強でも、「まず動く、そして考える」ことが大切です。
②    (説)そうして何度も成功や失敗をくり返しながら工夫を重ねると、きっと、自分にとって最高のものを実現できます。
③    (事)わたしは、かって陸上四百メートル走の選手であり、今はコーチとして指導をしています。
④    (理)最高の走り方を目ざして取り組んできた長年の経験から、そのように考えるようになりました。
★【文関係の考察】
1段落の①文と②文は2通りの関係が考えられる。
A①で最初に主張を述べ、②で説明している。
タイトルからも分かるとおり、①文が柱。②文は①文の説明。
①と②の関係をみると次のように考えられる。
・①「まず動く、そして考える」=説明②(何度も成功や失敗をくり返しながら)工夫を重ねる
・①「大切」=説明②「自分にとって最高のものを実現」
また、説明と同義あるいは類義の補足ともとれる。
「何度も成功や失敗を繰り返しながら工夫することが大切で、そのためには「まず動く、そして考える」事である。
Bまた②文は①文の言い換えとも考えられる。どちらが高次元かということ、前出と同じ理由で①文となる。
③④は、①のような考えにいたった背景?を述べている。背景を述べつつ権威付けをしている。
★【要約】「まず動く、そして考える」ことが大切だ。(20文字)
2段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (柱)わたしが走り方を工夫し始めたきっかけは、高校生のとき、当時取り組んでいた走り方にぎもんを感じたことでした。
②    (説)それは、「ひざを高く上げて」「あしを思い切り後ろにける」、つまり大きな動作で走るというものです
③    (説)そうすれば、速く走れるといわれていたのです。
④    (説)わたしは、毎日毎日この練習をくり返していました。
⑤    (説)けれども、この方法で四百メートルを走ると、苦しくて最後までつづかないのです。
⑥    (説)「何かがちがうのではないか。」と、なやみ始めました。
★【文関係の考察】
A案
①文が柱。②文の「それは」は①文の(ぎもんを感じた)「当時取り組んでいた走り方」であり、よって②文は①文の説明。①文に絞り込まれる。③文はその走り方に対する当時の受け取り方。当時の盲信ぶりを述べることで、①文の「ぎもん」を持ったことの非常識の度合いの価値付けになっている。③文は①文の補足的な説明。④~⑤までは、①の「ぎもん」を持つにいたった経過の説明。
B案
柱は①文。②③文は、①文の「当時取り組んでいた走り方」の説明。④⑤文は、⑥文の「なやみ」の生まれた背景。そしてそのまま⑥文が①文の「疑問」の内容。
★【要約】
柱①文の要約→走り方を工夫し始めたきっかけは、当時取り組んでいた走り方にぎもんを感じたことだ。40文字
説②「大きな動作で走る」を①文の要約文に挿入する。
2段落の要約文=走り方を工夫し始めたきっかけは、当時取り組んでいた「大きな動作で走る」走り方にぎもんを感じたことだ。50文字
★【吟味】
一文をさらに要約すると結局「工夫し始めたきっかけは、ぎもんを感じたことだ。」となる。究極的には「ぎもんをかんじたこと」が「工夫」につながると述べている。これは「動く、そして考える」が逆ではないのか?もちろん「卵と鶏」の関係なのであろうが、、、、。


3段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (柱)そこで、わたしは、少しでも楽に走れないものかと、べつの走り方をあれこれためしてみました。
②    (説)あるとき、「ひざを高く上げるような、大きな動作をせず走ったらどうなるのか。」と思いつきました。
③    (説)静岡県の記録会でためしてみると、予想をはるかに上回るすばらしい結果が出ました。
④    (説)このとき、必ずしも大きな動作で走るのがよいとはかぎらないのだと思いました。
★【文関係の考察】
柱は①文。②文の「」が①文のべつの走り方
柱が①文か②文か異論が出るところ
・①文を柱とする考え。①文の「あれこれ」こそが筆者のいうところの「まず動く、そして考える」そのものと考えられるからである。
また①文の「べつの走り方」は、②文の「ひざを高く上げるような、大きな動作を」しない走り方であり、②文は①文をくわしく説明している。③④文はその結果の説明。
・②文を柱とする考え。しかし①文は②文の思いへ至った経過の説明だとも考えられ、②文が筆者が言うところの「まず動く」にあたるのであろうことから②文が柱とするとらえ方。
・結局文章は筆者の意図とは関係なく書かれた独立したものだとする立場に立てば、「書かれ方」こそが重要だという立場から考えると、①文を柱とし、②文がそれに対応する文だと考えるのが今のところ妥当とする立場に立つ。
③文は②文で「思いついた」ことの結果の説明。
④文は②文で「思いついた」こと、③文の「すばらしい結果」が出たことの論理的な説明。
★【要約】①文=少しでも楽に走れないものかと、べつの走り方をあれこれためした。(31文字)
前文の「動いて、考えて、また動く」の「動いて」にあたるのは、「別の走り方を」「あれこれためし」である。よって、そこを具体的に入れると、
少しでも楽にはしれないかと、べつの走り方をあれこれためし、あるとき「ひざを高く上げない」走り方をためした。
④文=このとき、必ずしも大きな動作で走るのがよいとはかぎらないのだと思いました。を合わせて要約文とする。
楽に走れないかと、べつの走り方をためした結果、必ずしも大きな動作で走るのがよいとはかぎらないのだと思った。(57文字)
★【吟味】
②文から①文へと辿り着いた経過はどうだったのか?どの程度試行錯誤があったのか?②文の他にどんな走り方をやってみたのか?本当に他の走り方をしたのか?

4段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (説)後から考えて分かったのですが、それまでのわたしの、走るとき「ひざを高く引き上げる」ことばかりを考えすぎていました。
②    (説)たしかに、ひざを高く上げることは必要です。
③    (説)でも、それは地面をより強くふむために必要なのであり、ただ高く上げることに意味があるわけではないのです。
④    (柱)同じひざを高く上げる動作でも、地面を強くふむことを意識して行うことが大切なのだと気がつきました。
★【文関係の考察】
3段落の結果の説明の段落である。よって4段落は、3段落に絞り込まれる。よって要約する必要はない。
★【要約文】ひざを高く上げる動作でも、地面を強くふむことを意識して行うことが大切なのだと気づいた。
★【吟味】なぜ、地面を強くふくことが必要なのか?
     結局、ひざは高く上げるのか上げないのか?



5段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (説)もう一つの「あしを思い切り後ろにける」ことについては、それからしばらくして、べつの発見をしました。
②    (柱)あしを後ろにけるのではなく、体の下にしぜんに下ろしていく感じで走るとよいのです。
③    (説)走るときは、ついあしを後ろにけって、その力で前に進もうとしています。
④    (説)しかし、これではあしが後ろにのこってしまい、そのあしを前にもってくる分のむだが生じます。
⑤    (例)忍者がぴたあっと下り坂をかけ下りていくようなイメージで走ると、体のむだな動きがなくなり、すうっと進んでいけます。
【文関係の考察】この段落も、4段落とともに3段落に絞り込まれる段落である。


6段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (柱)あしの動きと同時に、うでのふりも重要です。
②    (説)このことは、陸上をつづけているとだれもが気がつくことです。
③    (例)陸上では、「うでで走れ。」という言葉があるほどです。
④    (例)ためにし、両手を後ろに組んで数十メートル走ってみてください。
⑤    (説)このほうが速く走れるという人はいないでしょう。
⑥    (説)これでは、着地するごとにかたがゆれてしまい、地面を強くふむことができません。
⑦    (説)右あしを出したときに左うでを前にふる、左あしを出したとき右うでを前にふるようにすれば、体全体のバランスが取れて、うでの力も使って力強くふみつけることができるようです。
★【文関係の考察】
②文~⑥文までは、①文「うでのふりの重要」性の説明。⑦文は①文に対応し、どううでをふればいいのかの説明。
★【要約文】うでのふりは、体全体のバランスを取り、力強くふみつけるために重要だ。(34文字)
なぜ「うでのふりが重要」なのかは、⑦文の「バランス」にあり、「バランス」がとれれば「力強くふみつけることができる」となっている。よって①文+⑦文で要約文を作る
★【吟味】


7段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (説)このように、いろいろためしながら、自分に合ったあしの動かし方や、うでのふり方を考えました。
②    (柱)そうすることによって、自分にとって最高の走り方を見つけることができた気がします。
③    (説or前提)人によって、ほねの長さや筋肉のつき方はちがいます。
④    (説or結論→前提)ですから、習ったことなぞるだけでは、自分に合った走り方を身につけることはできません。
⑤    (説or最終結論=柱)何がむだか、そうでないかは、自分で動いてみて発見するしかないのです。
★【文関係の考察】
A案 ②文を柱とし、他の文は②文の説明する見方
①文の「このように」で、2~6段を受け「自分に合ったあしの動かし方」「うでのふり方を考えました」とまとめている。②文の「そうすることによって」で①を受けて、まとめたことを「自分にとって最高の走り方」より高次に言い換えている。②文が柱。②文の「自分にとって最高の走り方」を①文の「自分に合ったあしの動かし方」「うでのふり方」が説明しているとも言える。③~⑤文は、②文の「自分にとって」の説明とも言える。
B案 ①②文と③④⑤文では違う内容を述べており、②文と⑥文、柱が2つあるとする見方
①②文は②~⑥段のまとめ。①文を②文で言い換えてまとめているので柱。
③文は④文の前提、④文が結論でありさらに⑤文の前提、⑤文が結論(柱)。とみる見方。
★【要約文】
いろいろためしながら考えることによって、自分にとって最高の走り方を見つけることができた気がする。
★【吟味】
・「自分にあった」「あしの動かし方」・「自分にあった」「うでの動かし方」
・それは「自分に(筆者)に合った」走り方なのか?多くの人に合った走り方=走り方の基本ではないのか?
★2~7段落までの要約
2段落→走り方を工夫し始めたきっかけは、当時取り組んでいた走り方にぎもんを感じたことだ。
 (当時取り組んでいた走り方)→「ひざを高く上げて」「あしを思い切り後ろにける」、つまり大きな動作で走る」①+②走り方を工夫し始めたきっかけは、当時取り組んでいた「ひざを高く上げて」「あしを思い切り後ろにける」走り方にぎもんを感じたことだ。
3段落→少しでも楽に走れないかと、べつの走り方をあれこれためしてみた
 (べつの走り方)→ひざを高く上げるような、大きな動作をせずに走る走り方。
①+②少しでも楽に走れないかと、ひざを高く上げるような、大きな動作をせずに走る走り方をためしてみた。
4段落→ひざを高く上げる動作でも、地面を強くふむことを意識して行うことが大切だ。
5段落→あしを後ろにけるのではなく、体の下にしぜんに下ろしていく感じで走るとよい。
6段落→あしの動きと同時に、うでのふりも重要だ。
7段落→そうすることで、自分にとって最高の走り方を見つけることができた。
8段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①    (柱)こうした経験からみなさんにつたえたいことは、自分にとって最高のものを実現するためには、「まず動く、そして考える」ことが大切だということです。
②    (説)自分なりの工夫も発見も、そこから始まります。
③    (説)自分から積極的に動いてみましょう。
④    (柱)そうして、成功や失敗をくり返し、工夫を重ねていくことで、あなたにしかできない方法が、きっと見つかるはずです。
★【文関係の考察】
★【要約文】
①自分にとって最高のものを実現するためには、「まず動く、そして考える」ことが大切である。
⑤    成功や失敗をくり返し、工夫を重ねていくことで、あなたにしかできない方法が、きっと見つかる。
①+④自分にとって最高のものを実現するためには、「まず動く、そして考える」ことが大切で、成功や失敗をくり返し、工夫を重ねていくことで、あなたにしかできない方法見つかる。

未完・・・残念

生き物はつながりの中で

前文
1段落要約
説①イヌ型ロボットを知っていますか。

説②

説③でも、ロボットのイヌは本物のイヌとはちがいます。
 ↓
柱④どこがちがうのでしょう。
 +・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
柱⑤そのちがいを考えながら、生き物の特徴をさぐってみましょう。
要約【ロボットと本物のイヌのちがいを考えながら、生き物の特徴をさぐろう。】
33文字

★本文(本文Ⅰ 本文Ⅱ 本文Ⅲ)
 2段落 説明 本物のイヌの説明
 ↓
 3段落 説明 ロボットのイヌの説明
 ↓
 4段落 柱 ①~⑦本物のこと
    ⑧⑨文 ロボットのこと
柱⑩文 外から取り入れたものが自分(身体)の一部になる(り)、(そのようなつながり方で)外とつながっているのが、生き物の特徴です。
 +・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5段落柱①~⑥本物のこと
柱⑦文 変化・成長しながら、一つの個体として時間をこえてつながっている、これも生き物の特徴です。
柱⑧ロボットには、このような変化や成長はありません。(ロボットのこと)
 +・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6段落 柱 ①~⑥
柱⑦チロもあなとも、長い長い生命の歴史があったから生まれてきたのです。
柱⑧どんなによくできたロボットでも、このようにして子孫を残すことはできません。
要約文(つながりをとるか、内容をとるか)
・    生き物は、外から取り入れたものを自分の一部とし、一生を通じて変化・成長し、子孫を残す(ことで生命のつながりを持っている)という特徴がる。
・    (食べ物を外から取り入れ自分の一部とすることで、)外とつながり、(一生を通じて変化・成長することで)個体として時間をこえてつながり、(子孫を残すということで)生命の歴史としてつながっていることが生き物の特徴である。

★後文
7段落 
① 説
② 説 外とのつながり・個体としてのつながり、過去の生き物たちとのつながり
③    柱 このつながり
要約 外の世界(とのつながり)や個体(としてのつながり)、過去の生き物(たち)とのつながりが、生き物の生き物らしいところだ。51字

8段落 前提①
    ↓
  結論②だから
    ↑
  例 ③まとめて
  ・・↓・・・・・
  柱 ④
    +
  柱 前提⑤
 ・・・↑・・・・・・・・・・・・・・・・・
  柱 結論 前提⑥そう考えると
    +
  柱 結論   ⑦そして

説明的文章の読み方指導の流れ

★説明的文章の指導の中心的なねらい
 ①事実と論理の読み取り
 ②上位概念、下位概念

★説明的文章の指導順序
0,    表層よみ
①     ジャンルの確認
文章によって読む目的が違ってくる。その文章がどういった文章かを見極めるちからをつけることが重要。
最近論説文も小学校の教科書にも載せられるようになってきている。

・記録文=「時間の論理(順序)」で書かれている
・説明文=「時間のの論理」以外で書かれたもの。定説を説明したもの。
・論説文=「時間のの論理」以外で書かれたもの。仮説を論証したもの。

②     段落の指導
③     語句の指導
④     音読・範読

1,    構造よみ
前文(問題提示・話題提示)全体を包括する問題・話題。時には結論を述べることも
本文(前文で提示された問題を説明)
後文(全体を包括するまとめ・結論、残された問題、新しい問題)

低学年では三部構造のないものが多い。
構造よみでは「包含関係」を重視する。(前文・後文は全体を包括しているかどうか)
本文がいくつかに分かれる場合は本文Ⅰ、本文Ⅱ、、、として区切り小見出しをつける
①    前文を明らかにする。→説明文の内容目的を理解。
②    後文を明らかにする。→前文との整合性に着目。残りが本文。
③    接続語、くりかえし使われる言葉などに着目し手がかりとする。

2,    論理よみ
段落相互、文相互の関係を読み取る
上位概念下位概念を育てる
要約の仕方を学ぶ

・前文(問題文を明らかにする。)(後文や本文との整合性をみる)
・本文(段落相互、文相互の関係を読む)
記録文=「いつ」を基準に5W1Hで要約する。
説明文=柱の段落(文)をもとに段落関係(文関係)を読み取り、要約する。
柱←(説明、例、理由、、)
      論説文=前提→結論の関係を読み取り、要約する。
※要約文=柱の文を明らかにし、柱の文を要約する。(分節に区切る。内容や制限字数に合わせて下から取捨選択していく。常体にする。)
・後文(要旨を読み取る)

3,    吟味よみ
★事実現実との対応を吟味する
 ①    事実が現実と対応しているか
 ②    事実が二つ以上に解釈できて誤解を生じさせないか
 ③    誤解を与える事実提示はないか
 ④    事実提示に誇張・矮小化はないか
 ⑤ 選ばれた事実は妥当か
★柱と他の関係を吟味する
 ① 柱と説明(例)の整合性はとれているか。適切か。
 ② 他に説明(例)は考えられないか
 ③ わざと隠されている(見落とされている)説明(例)はないか
★論理関係を吟味する
 ① 論理に飛躍・すりかえ・ねじれはないか
 ② 論理の整合性はとれているか
 ③ 前文と後文の整合性はとれているか
 ④ 後文の根拠はあるか。

記録文=事実の吟味
説明文=事実と論理を吟味
論説文=前提と結論の関係を吟味 仮説の検証

吟味読みは、時には表層、構造、論理よみの段階で平行して行うこともある。
特に後文と本文での説明の論理関係に着目。後文の論証として本文は十分か、整合性はとれているかなど。

4,    その他
・「指示語」「接続語」「比喩」などの指導も必要に応じて行う。

・学年ごとの中心内容
1年生→表層読みと吟味読み(書かれていることの把握、事実の読み取りと、文、段落の意識付け)
2年生→表層読みと吟味読みと構造よみの導入
中学年→表層読み・構造よみ・吟味読みと論理読みの導入
高学年→表層読み・構造よみ・論理読み・吟味読み



生き物は円柱形 その2(教材分析)

0,    表層①    ジャンル (説明的文章 論説文)
はたしてこの「生き物は円柱形」は説明文なのか、論説文なのか、議論の分かれるところである。前文の「生き物は円柱形である。」は証明済みの事実と言えるであろうか?その前提である「生き物に共通性がある」「生き物は多様である」ということは証明済みの事実と言えるであろうか?そもそも、それが証明済みであるかどうかを子どもは分かるはずもないのではないかという疑問が出てくる。それは大人にとっても同じである。
そうだとすると、「論説文である根拠=仮説を含む」だけでは不十分だと言える。あえて上げるとすると、「何かと証明しようとしている説明文」ということか。
だとすると、「生き物は円柱形」だということを証明しようと試みているので=論説文だと考えるとすっきりとするのではないかと考える。

②    段落 11段落
③    語句   多様・共通性・首
④    音読・判読

1,    構造前文 1段落
本文 2段落~9段落
   本文Ⅰ 2~5 円柱形は生き物の基本になっている
   本文Ⅱ 6~10なぜ生き物の基本は円柱形になっているのか
後文 11段落
★構造よみのポイント
 ①10段落を本文とするのか、後文とするのか。

2,    論理よみ★前文
 ①話題の提示「地球には、たくさんの生き物がいる。」
 ②柱「生き物の、最も生き物のらしいところは、多様性だというところだろう。」
 ③柱「しかし、よく見ると、その中に共通性がある。」
 ④例「形の上でわかりやすい共通性は、「生き物は円柱形だ」という点だ。」
  「問題文を④文に続けて書いてみよう。」
  「共通性の一つである「生き物は円柱形だ。」という点について考えてみよう。」
  ※前文の分析は大変難解である。よって、一応答えを出しておいて、後文まで読み取っ  た後に、後文を前文の整合性を吟味することで、もう一度分析するようにしたい。
  ※➃文を柱と考えることもできる。なぜなら➃文こそが題名と整合しているからであ   る。

★本文
  本文Ⅰ 2~5 円柱形は生き物の基本になっている
    2段落 例(円柱形の例 人間)
    3段落 例(円柱形の例 動物植物)
    4段落 説明 例外の例
    5段落 4段落の例外の説明
    ※2〜5段落にいわゆる柱の段落はないように思える。

  本文Ⅱ 6~9 なぜ生き物の基本は円柱形になっているのか
    6段落 問題(柱)
    7段落 例(実験1)強さ(8段落)のための実験
    8段落 説明 強さ(柱の答え1)
    9段落 説明 速さ(柱の答え2)
 
★本文Ⅲ
   10段落 柱
①    例 円柱形の利点1強さ(7・8段落を受けている)
②    例 円柱形の利点2速さ(9段落を受けている)
③    柱 「だからこそ」(結論を述べようとしている)(2~5段落を受けている)

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※こうしてみてくると、本文Ⅰは6段落の前提になっており、本文Ⅱは6段落の証明になっているといえる。よって、本文を分けたことの根拠?が薄らいでくる。本文は2~9段落でよいのではないかと思えてくる。それでもあえて分けるとすると
本文Ⅰ(2~5段落)前提
本文Ⅱ(6段落)結論
本文Ⅲ(7~9段落)証明
とする方が、文章構成的にあっているように思う。
だとすると、実践的にはこの【前提】→【結論】←【証明】の関係を読み取ることが論理読みの課題となるのではないかと思う。
しかし、こうしてみてくると
6段落は本文Ⅰの結論であるが、それは同時に本文Ⅲの前提になっているのではないか、ということである。そうすると以下のようになる
本文Ⅰ(2~5段落) 前提
                     ↓
本文Ⅱ(6段落)   結論=前提
              ↓
本文Ⅲ(7~9段落)    結論
ここで10段が浮かび上がってくる。
10段落は本文Ⅲなのではないか。そう考えるとぴたっとあてはまるように思える。
本文Ⅰ(2~5段落) 前提Ⅰ
                        ↓
本文Ⅱ(6段落)   結論Ⅰ=前提Ⅱ
              ↓
本文Ⅲ(7~10段落)    結論Ⅱ
ということになる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ★後文
  11段落 柱
①    事実
②    説明
③    筆者の感想
④    意見
⑤    意見
⑥    柱

3,    吟味よみ1段落  多様であるが、共通性がある。ということは本当に多様と言えるのか?
    多様である証拠は?。(一般的に多様であること承認していい)
2段落 「体の部分で円柱形でないものはない?」・・・頭はどうか?(「首」がどこを示    しているのかも論議)
4段落 「でも」で、例外を出し、それを説明することで説得力を持たせている。
    逆にあらかじめ例外を出すことで読み手の思考を誘導しているとも言える。
    述べられた以外の例外はないか? 例えば卵や種はどうだろうか?卵や種は生き    物にとってもっとも重要なものであろう。しかし、円柱形ではない。球体に近     い。それは球体が一番強いからではないのか。
6段落 【前提Ⅰ】の【結論】は「生き物の基本が円柱形」だと読める。
    では、「生き物の基本が円柱形」とはどういう意味か?
    前文では「形の上でわかりやすい共通性は、「生き物は円柱形だ。」」とある。    「形の上」と限定がいつのまにか外されて、「基本が」とすりかわっている。
    正確には「生き物の形の基本形が」とすべきであろう。
8段落 「円柱形は強い形」の根拠は7段落の実験。強いにあわない例はないのか?
    チョウの胴体は円柱形であるが強いのか?ミミズは?
    角のある形より、曲げやすいから円柱形とは言えないか?
11段落 11段落の6文のうち5文が「多様」だと言っている。最後の⑥文だけが共通性を    述べている。本文で述べてきたことは「円柱形」であり、それは「共通性」で     あったはずである。
    「生き物は実に多様である。」多様でないことを述べてきたのではないか?
    「多様な大きさや形をかくとくしてきた」形まで多様だと言っている。矛盾して    ないか?
    筆者は「生き物は多様」だと(形もふくめ)。それが素晴らしいと言っている。    後文のほとんどそのことを述べることに使っている。このことから、筆者が言い    たかったことは「生き物は多様で、それであるがゆえに素晴らしい」ということ    だと考えられる。
    では、
   「それと同時に、多様なものの中から共通性を見いだし、なぜ同じなのかを考える    ことも、実におもしろい。」ということはどういうことか?
    見つだす行為、その理由を「考える」ことが「おもしろい」と言っている。
    前文と後文の整合性はどうか?。

※まだ不十分で不正確な分析である。たたき台として提示する。大変面白教材であり、ようやく小学校にも出てきた「論説文」である。みんなで深めていきたい。

例会報告 「生き物は円柱形」を考える

「生き物は円柱形」 その1

5月7日GW開けのサークルでした。参加は14名。本日は、2年生「たんぽぽのちえ」を記録文として視点と吟味よみ、5年生「生き物は円柱形」の2つをみんなで考えあいました。本日のサークルを受けて「生き物は円柱形」の流れを考えてみました。



★論説文の指導
5年生の「生き物は円柱形」という説明的文章は論説文です。「論説文」は5年生の子どもたちにとって、はじめて対面する説明的文章になります。授業では「論説文の読み方」を指導することになります。
一般的に「論説文」には筆者の仮説(主張や意見)が述べられその論証が示されています。
「生き物は円柱形」では、筆者の仮説を(【前提】→【結論】)を繰り返しながら証明している文章です。
そこで、はじめての「論説文」の指導として以下のようにことが必要になってきます。
①    最初にこの教材が「論説文」であることを理解させる。
②    「論説文」は一般的に(【前提】→【結論】)を繰り返しながら自分の論を証明していくものであることを説明する。(【前提】→【結論】の例文を示す)
③    ②の型を「指標」として「生き物は円柱形」にあてはめていく。
④    その論証の内容を吟味する。

実際の授業では、他の説明文どうように「表層よみ」→「構造よみ」→「論理よみ」→「吟味よみ」の順で進めていきますが、以下のように上記の指導を入れていきます。
0,    表層よみ(ここで上記の①と②の指導をする。)
1,    構造よみ(前文・本文・後文にわける)
2,    論理よみ(ここで上記の③の指導をする。)
3,    吟味よみ(ここで上記の➃の指導をする。)


★本文の論理よみは、6段落と10段落の関係から
 論理よみでは、本来は柱の文を中心に「絞り込み読み」を進めるテイクのですが、(【前提】→【結論】)のパターンを最初から当てはめていく方がわかりやすく時間的にもその方がいいと思います。(【問い】→【答え】でもよい)
さらに理解させやすいように2段落から順を追って読んでいくのではなく、まず6段落(前提)→10段落(結論)の関係を読み取ることがはじめる方がスムーズにいくと思います。

6段落「仮に、生き物の基本が円柱形だとすると、それには理由があるにちがいない。円柱形だと、どんないいことがあるのだろう。」
10段落「円柱形は強い。円柱形は速い。だからこそ、生き物の体の基本となっているといっていいだろう。」

まず6段落の読み取りをします。具体的には次のように子どもたちに問います。
「6段落の『どんないいことがあるのだろう』は「問い」であり実は「いいことがある」という【前提】にもなっています。では、その「答え」は何段落ですか?」
「10段落『円柱形は強い。円柱形は速い。』」が「答え」であり、【結論】になっていることを抑えます。その【結論】の根拠(理由)が7段落から9段落だということも確認します。(ここでこの根拠を吟味させてもいいと思います。)

次に6段落をくわしく読みとらせます。
6段落の①文目「生き物は円柱形」が前提となって、「問い」(どんないいことがあるのか?)になっています。ここでも【前提】→【結論】の関係になっていることを押さえます。この【結論】が10段落の【前提】になっています。
そこで
「では、6段落の「生き物は円柱形」であることの証拠はどこに書いてありますか?」
と子どもたちに聞きます。すると「2段落から5段落」であることがわかります。
この「2段落から5段落」までが6段落の「生き物は円柱形」の【前提】になっていることを押さます。
このように【前提】→【結論】=次の【前提】→【結論】を繰り返しながら論証していることをもう一度確認します。
論理よみはこのように流してくとスムーズにいくのではないかと思います。

続く、、、、

2013年4月16日火曜日

「のどがかわいた」

 新年度1回めのサークルでは「のどがかわいた」をみんなで読んでみました。
 五年生の物語です。

 この物語は、とても変わった?物語で、ある意味とても魅力的な作品だと思います。
話者が「内の目」であること。「?(なんで?どういう意味?)」と考える箇所が多いこと。大きな展開や会話が少ないことなどが上げられます。

物語の展開部に次のような箇所があります。

【こいつ、のどのかわきを知っているんだ。ミッキーが、だ。】
【「ミッキー、君、のどのかわきを感じられるの。」とぼくはきいた。ミッキーが、うんとうなずいた。それ以上は、二人ともしゃべらなかった。】

上記の箇所にはいくつかの疑問があります。
「のどのかわきを知っている」のは誰でも当たり前だと思えます。それをミッキーが知っていたことを、倒置(1文目)を使ってまで驚きの表現で述べています。また、普通は「のどのかわき」は、2文目のように「感じ」るもので、「知っている」という言い方は、どういう意味かと考えさせられます。
2文目は、他者に「のどのかわきを感じられるの」と尋ねています。これまた、おかしな質問です。それに対してミッキーは「うんとうなず」いています。普通なら「なにそれ、何が言いたいの、聞きたいの?」とか「そんなの当たり前だろ」、、、などとなるのではないでしょうか?また、「それ以上は、二人ともしゃべらなかった。」のはなぜなのでしょうか?これを境に、二人の関係性は変貌していく重要な部分です。そういえば冒頭でも主人公のイタマルは、「水を飲む」こと「のどのかわき」にこだわりをみせています。なにより題名も「のどがかわいた」です。

これを読み解くことが、この作品を読み解く鍵になる部分でもあります。
ところで辞書をひくと「かわき」には二つの意味があります。1つは言葉通り、水分が不足している状態です。もう一つは、得られないものへの心理的な欲望・欲求の高まり。欲しいものが満たされない心の状態をいうこともあるそうです。だとすると、二人の間で交わされている「かわき」は後者であると読むと違った意味が出てきます。それが何なのか、おそらくイタマルにも分からない、言葉に表現できないのだと考えると理解できそうです。だから、「それ以上は、二人ともしゃべらなかった」のではないでしょうか。しゃべりようがなかった。しゃべらずともわかり合えたのだと、、、。

 この作品は、これ以外でも、通り一遍の読みではわからない、というか気づかない部分がたくさんあります。だからこそ、そこを子どもたちと一緒に気づいていければ、とても面白い授業になると思います。

追伸(筆者の背景と作品に隠されたもの)
 裕福なユダヤ人医師の家に生まれたウーリー・オルレブと弟は、第二次世界大戦勃発後、まずゲットーに隔離され、母親が殺されたあとポーランド人区に逃れてかくまってもらい、それから二十二か月をベルゲン・ベルゼン強制収容所で過ごしたそうです。どんなときにも空想と冒険の心を持ちつづけ、ホロコーストの時代を生きたのだそうです。
 だとすると、物語の中に出てくる「空想」には、また違った、そして深い意味が隠されていると思われます。著者にとっての「空想」は、それこそ「どんなに絶望的な現実の中であっても誰にも支配されなることのない精神(性)世界の自由」とか「どんな困難な状況でも誰にも犯すことのできない希望」と言った意味があると考えられます。しかし、5年生という段階を考えると、そこを理解できるかは指導をする際に判断が必要だと思います。

それにしても、指導書ではこの作品は3時間の割り当てだそうです。それはないでしょう。そこんとこどうにかなりませんかね、光村さん、、、、。おねがいしますよ。


2013年3月15日金曜日

教材研究をみんなのものにⅢ 完成!!

今年もできました。


教材研究をみんなのものにⅢ
「詩・短歌・俳句の読み方指導」
〜〜読みの「技術」をたしかなものに〜〜



20篇作品の分析や授業記録を載せています。
詩の授業は、自分の十八番を持つことが大切です。
ぜひこの本に載っている作品の中から
自分の十八番をつくりだしませんか?

購入希望
白石研究室まで
定価今年も500円です。