2013年7月27日土曜日

おおきなかぶ 

「おおきなかぶ」まず教材について

「おおきなかぶ」の教材の変化・成り立ちついては、静岡大学教育学部研究報告『「おおきなかぶ」の日本への紹介と変容-成立』に詳しい。
(以下当ブロブが面白いと思ったところを抜粋。なお、この論文では、ここでは取り上げないが、最初に日本へ紹介された初版訳から紹介されており興味深い論文である)
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前略)ロシアにおける昔話の主人公は圧倒的におじいさんとおばあさんであるらしい。おじいさん(ヂエートカ)、おばさん(バープカ)とならんで、まごむすめ(ヴヌーチカ)となり、子犬(スーチカ)も、語尾に同一の接尾語を持つことから、問題の「かぶ」も、レーパという一般的な名詞ではなく、レープカという語が選ばれるという。しかもこれらはすべて語頭にアクセントがある上に、二音節で表現れる。語りだしの『お爺さんが種をまきました』という文章は、『蕪』と『お爺さん』の語呂合わせによって生まれたのだ。『男は度胸、女は愛嬌のようなものである」(中略)
そして、このお話は一人ずつ登場人物が増えて、同じ行為を繰り返す「累積民話(昔話)」であり、ロシアの民話には多いタイプであるという。そのため、語り口調は、二拍子のアクセントが規則的に並び、強弱の繰り返しというリズムが生まれる。
こうした「累積民話(昔話)」は、鎖状につながったものが切れて、もとの状態に戻る、ことが重要なのだそうである。(後略)
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※「おおきなかぶ」の訳・絵本・教材には様々なものがある。絵本で確認をすること、読み比べてみることも研究する上では大切であると思う。内田莉子訳が有名であるが、教科書版の西郷竹彦訳との違いは様々に研究されてきている。どちらが優れているのかは何とも言えないが、ここでは、あくまでも教科書版(光村)を絵本的に取り上げ考察していくこととする。

★「おおきなかぶ」教材研究

一年生1学期の有名な教材である。
まずは、表層よみから。
学年が下がれば下がるほど表層よみを重視していかなければならない。特に音読は、繰り返しさせたいものである。必要なら劇化もさせる(ここでは、劇化については述べないこととする)。しかし、ここではあくまでも「読み」の領域として教材研究を進めてみたい。

0, 表層

最初は「表層よみ」である。
範読・音読
ここでは、まず範読することで、子どもたちを物語りの世界へ導きたい。そのためにリズムをつけてテンポ良く範読したい。
音読は、一文ずつオウム返しに音読させたり、場面ごとに音読させたり、役割交代しながら読ませたりと、子どもたちが飽きないような工夫も必要。
そして何よりこの作品のよさ、面白さは、リズムである。だとすると、十分に音読をしリズムの面白さを体験させることは重要な学習であると言える。
※音読してみると、以外とリズムがとりにくいように私には感じられる。そこが西郷訳への批判の一つになっている。

言葉の学習
 次に言葉について学習を進める。わからない言葉があれば子どもたち質問させたりする。以下の言葉については、読みを進めるために知っておかなければならない言葉である。これらは、たとえ子どもから出されなくても、教師から取り上げて指導していく。(教師の取り立て指導と呼ぶ)
 まず「かぶ」についてである。教科書に絵があるので、子どもたちから出されないかもしれないが、「かぶ」は、クラスの全部の子どもたちにとっては身近な存在とは言いがたい。そこで、教科書の絵はもとより、写真や実物などを使って教えたい。
 「かぶ」は中央アジア原産、弥生時代から日本にもあったそうである。日本では3~4月まき時。40~60日で収穫できる。しかし、ここで言う「かぶ」は、日本で認識しているそれとは違うようである。サークルの仲間が調べたところによると、ロシアの「かぶ」は本当に甘いそうである(食べてみたいものである)。しかも、ロシアの多くの家庭で食されている「ボルシチ」に欠かせない食材らしい。
そうだとすると、私たちが抱いている感覚と全く違った感覚であろうと思われる。より身近で、より大切な食材なのだろう。このことを子どもたちに分かるように、分かる範囲で教える必要がある。
また、普通の「かぶ」おおきと比較することで、この「おおきなかぶ」が、文字通りそうとうの大きさのかぶ、文字通り「おおきなかぶ」でことがわかる。
 次に結末に出てくる「とうとう」という言葉である。辞書によると「(副)ついに、結局(広辞苑)」だそうである。ここでは、「とうとう」を使って単文作り(発表させればいいと思う)をさせたい。
この他「まご」についても、理解していない子がいる場合は理解させる。また「おじいさん」「おばあさん」については、一般的なイメージ、例えばお年寄り、優しい、、、程度の共通理解をさせたい。

1, 構造よみ

中学年以降であれば、ここで「構造よみ」へと進む。しかし1年生の1学期、最初の物語である。そこで、「構造よみ」へつなげていくためのステップとしてここでは「起こったこと調べ」と「変わったこと調べ」をする。これらは、子どもたちに、「物語(事件)の流れ」や「プロット」を掴むための視点などを育てることが目的である。それらの視点は、後の「構造よみ」につながるものでもある。
また、「登場人物(主人物・副人物)」の確認(一年生ということで、『主人公』という言葉で教えてもいい)なども行う。

どんなことが起こったかな?(起こったこと調べ)
・おじいさんがかぶのたねをまいた
・かぶがおおきくなった
・おじいさんがかぶをひいたけど、ぬけなかった。
・おじいさんは、誰を呼んできたの?  なぜよんだの?(以下同様)
・おじいさんがおばあさんをよんで、かぶをひいたけど、ぬけなかった。
(以下同様)
一問一答形式でいいので、質問しながら流れをつかませる。誰が、誰をよんできたのかをはっきりさたい。

物語の中で変わったことは?(変わったこと調べ)
・一人ずつ増えていく。
・一人→六人
・くる人(動物)がだんだん小さくなる。力が弱くなる。
・だんだん疲れてくる=力が入らなくなる。
・「ぬけません」→「とうとうぬけました。」
・種→おおきなかぶ
・けれども→それでも→やっぱり→まだまだ→なかなか
特に最後の「けれども」→「それでも」→・・・は、行為ではなく表現の変化であるため、子どもたちから出させるのは難しい。そこで「同じ言い方のくりかえし」が続くことを気づかせ、その中で変化している言葉に着目させるなど、工夫が必要だと思われる。またの「面白いところ」を終えてから、「繰り返しの中の変化」に着目させてもいいかもしれない。

出てくる人は、何人?誰?(主人公という言葉の指導)
六人(動物も、人物としてあつかう) おおきなかぶ
主人物は誰であろう。おじいさんか? だとすると副人物は残りの5人ということになる。

この物語の面白いところは?
A繰り返しの面白さ
1「うんとこしょ、どっこいしょ。それでもかぶはぬけません」のセリフの繰り返し
2一人ずつ増えていくが、同じ行為をくり返していくところ
B一人ずつ増えて、同じことをくり返すところ。
 1おじいさん
 2おじいさん、おばあさん
 3おじいさん、おばあさん、まご
 4おじいさん、おばあさん、まご、いぬ
 5おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ
 6おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみ
C引く人がだんだん小さくなるところ。
D最後に一番小さなねずみがひいたらぬけたところ。(おち)
以上のようなことが考えられる。自由に発表させたい。この他が出されても、共感的・肯定的に取り上げていく。

2, 形象よみ

★導入部と終結部を中心に読み進める。その際、文章だけでなく、絵を手がかりとして読んでいく。一年生ということもあり、助言を多用しながら進めていく。(よってここでは、助言のヒントとなるような指導言を入れながら進める。)
光村図書教科書よりお借りしました

① 時(絵から季節を読む)
季節はいつかな? 絵の何を見たらわかると思しますか?=おじいさんの服装=長袖、生地も厚そう。
→だから、夏は半袖だから、夏じゃないよ。冬だよ。
→長袖を着るのは冬だけかな?
かぶの種をまく時期はいつ頃か知ってる?=春(日本では3~4月)  40日~60日で収穫

② 場
ここはどんな場所かな?絵をみて考えて?
家の様子→山小屋みたいな家。日本の家とはちがう。=外国
回りに他の家がない=いなか
広い畑がある
 木は見えないから森ではない。高原?
中心に読み取らせたいのは、人物である。時・場は、確定する要素はない。そこで時・場については軽く扱うか、時には省略してもいいと思う。

③ 人物
★おじいさん・・・男、年寄り
◎絵からわかること
白いひげが長い=お年寄り
手を見てごらん。手や指からわかることは?=手のしわ、指の関節が太い→働き者。力が強そう。お年寄り
顔の色が赤い=日に焼けているのかな→働き者。農夫。白人(日本人ではない)
種のまき方=腰をまげている→粒一粒丁寧に種をまいている。
おじいさんの服からわかることはない?
=ながい上着。服が汚れている。破れている。布施。帽子(ハット)。日本の服とちがう。作業するための服。
=ふせをして使っている→貧しそう。物を大事にしている。
=作業をするための服→きっとおばあさんがしてくれたんだよ→優しいおばあさんじゃないかな
Aおいいさんの気持ちは?一生懸命。大事に育てよう。
Bおじいさんはどんな人?働き者
        
◎セリフからわかること
・「あまいあまいかぶになれ」「あまいかぶになれ」とどうちがう?
おじいさんのあまいかぶになって欲しいという気持ちが強いのがよくわかる。
・「おおきなおおきなかぶになれ」「おおきなかぶになれ」とどうちがう?
・おじいさんは、なぜかぶの種をまいたのだろう?
※以下同様に絵を中心に人物形象を読み取る(おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみ)
光村図書よりお借りしました
★まご・・・教科書の絵では、まごは笑顔であり、あきらかに面白がっている。楽しんでいると言ってもいい。
→まごは、おじいさんやおばあさんと一緒にかぶをぬくのが楽しい。
いかにも子どもらしい反応だと言える。
→まごは、おじいさんやおばあさんが大好き。
★出てこない人物・・・まごの両親。

④ 事件設定 
・おじいさんは何をしましたか?わかる文に線を引きましょう
おじいさんが、かぶのたねをまきました。
・その種はどうなるのですか?
あまいあまい、おおきなおおきなかぶになりました。
・どのくらい「おおきなかぶ」になりましたか?
おじいさん一人では、ぬけないくらい。だから、おばあさんたちをよぶのですね。
※「事件設定」という言葉を教える必要はない。人物の読みの流れで、読んでいく。

⑤ 話者
(外の目)省略してよい。

⑥ 最後の一文
A「とうとう かぶは ぬけました。」
(ついに かぶは ぬけました。)→話者がぬく側に寄り添っている。「やっとぬけた」
(けっきょく かぶは ぬけました。)→抜けたことに対して、否定的な感じがしないか?
「とうとう」に違和感はないか?
B「とうとう かぶ ぬけました。」「とうとう かぶ ぬけました。」の違いは?
なぜ「は」なのか?「が」とどう違うのか?
「ぬけてしまった」的な感じがどうしてもするのですが、、、、深読みしすぎか、、、。
※ここも流れの中で、、、、。

3, 主題へのアプローチ

① 一文で書いてみよう(~が・・・によって〇〇した話)
おじいさんが、おばあさんやまごやいぬやねこやねずみと一緒におおきなかぶをぬく話。
おじいさんが、おばあさんやまごやいぬやねこやねずみに助けられて(ちからをかりて)おおきなかぶをぬく話。

② 題名よみ
・「おおきなかぶ」意外に考えられる題は「おじいさんと仲間たち」どうちがうのか?
題名からわかることは、物語の中心は「おおきなかぶ」だということ。登場人物に名前がない、個性が特にないことからもそう考えられる。だとすると最後の一文は、「ぬけてしまった」的な意味がないこともないのかなと、、、。はやり深読み過ぎか、、、、。

③ 物語に関わる疑問?
・この後かぶをどうしたのか?
・かぶが象徴するものは?(これは一年生には無理か?)
・なぜかぶは一つか?他のかぶは?だから貴重なのか。考えすぎか。
・いぬやねこやねずみはなぜ手伝ったのか?「面白そうだから」と読むべきか?
・なぜ名前がないのか?
・お父さん、お母さんはどうしたのか?
※読む際に、なにより大切にしたいことは、子どもたちが「?」を浮かべることができるようにしていくことだと思う。それが物語の面白さに繋がるし、読み深めるヒントになるからである。子どもたちの「?」には、答えが出ないものもあると思う。それはそれとしてオープンエンドの話し合いでよい。

④ 好きなことろは(いいな、気に入った)、どこですか?理由も言いましょう。

⑤ いやだなと思うところはどこですか?理由も言いましょう。
※⑤は批評へのアプローチのつもりだが、④まででいいのかもしれない、、、。

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