2012年6月8日金曜日

「動いて、考えて、また動く」 高野 進 (光村4上)

1段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    運動でも勉強でも、「まず動く、そして考える」ことが大切です。
    そうして何度も成功や失敗をくり返しながら工夫を重ねると、きっと、自分にとって最高のものを実現できます。
    わたしは、かって陸上四百メートル走の選手であり、今はコーチとして指導をしています。
    最高の走り方を目ざして取り組んできた長年の経験から、そのように考えるようになりました。

2段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      わたしが走り方を工夫し始めたきっかけは、高校生のとき、当時取り組んでいた走り方にぎもんを感じたことでした。
      それは、「ひざを高く上げて」「あしを思い切り後ろにける」、つまり大きな動作で走るというものです
    そうすれば、速く走れるといわれていたのです。
    わたしは、毎日毎日この練習をくり返していました。
    けれども、この方法で四百メートルを走ると、苦しくて最後までつづかないのです。
    「何かがちがうのではないか。」と、なやみ始めました。

3段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    そこで、わたしは、少しでも楽に走れないものかと、べつの走り方をあれこれためしてみました。
    あるとき、「ひざを高く上げるような、大きな動作をせず走ったらどうなるのか。」と思いつきました。
    静岡県の記録会でためしてみると、予想をはるかに上回るすばらしい結果が出ました。
    このとき、必ずしも大きな動作で走るのがよいとはかぎらないのだと思いました。

4段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    後から考えて分かったのですが、それまでのわたしの、走るとき「ひざを高く引き上げる」ことばかりを考えすぎていました。
    たしかに、ひざを高く上げることは必要です。
    でも、それは地面をより強くふむために必要なのであり、ただ高く上げることに意味があるわけではないのです。
    同じひざを高く上げる動作でも、地面を強くふむことを意識して行うことが大切なのだと気がつきました。

5段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    もう一つの「あしを思い切り後ろにける」ことについては、それからしばらくして、べつの発見をしました。
    あしを後ろにけるのではなく、体の下にしぜんに下ろしていく感じで走るとよいのです。
    走るときは、ついあしを後ろにけって、その力で前に進もうとしています。
    しかし、これではあしが後ろにのこってしまい、そのあしを前にもってくる分のむだが生じます。
    忍者がぴたあっと下り坂をかけ下りていくようなイメージで走ると、体のむだな動きがなくなり、すうっと進んでいけます。

6段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    あしの動きと同時に、うでのふりも重要です。
    このことは、陸上をつづけているとだれもが気がつくことです。
    陸上では、「うでで走れ。」という言葉があるほどです。
    ためにし、両手を後ろに組んで数十メートル走ってみてください。
    このほうが速く走れるという人はいないでしょう。
    これでは、着地するごとにかたがゆれてしまい、地面を強くふむことができません。
    右あしを出したときに左うでを前にふる、左あしを出したとき右うでを前にふるようにすれば、体全体のバランスが取れて、うでの力も使って力強くふみつけることができるようです。

7段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    このように、いろいろためしながら、自分に合ったあしの動かし方や、うでのふり方を考えました。
    そうすることによって、自分にとって最高の走り方を見つけることができた気がします。
    人によって、ほねの長さや筋肉のつき方はちがいます。
    ですから、習ったことなぞるだけでは、自分に合った走り方を身につけることはできません。
    何がむだか、そうでないかは、自分で動いてみて発見するしかないのです。

8段落・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    こうした経験からみなさんにつたえたいことは、自分にとって最高のものを実現するためには、「まず動く、そして考える」ことが大切だということです。
    自分なりの工夫も発見も、そこから始まります。
    自分から積極的に動いてみましょう。
    そうして、成功や失敗をくり返し、工夫を重ねていくことで、あなたにしかできない方法が、きっと見つかるはずです。

この構造をどう読みますか?

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